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糸井 |
では、おふたりに質問しますよ。 |
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ジラール |
何かすごく深刻な質問が
來るんじゃないかな?
ドキドキします。
私たちのいちばんの最悪な思い出とか‥‥。 |
糸井 |
ちょっとそれに似ています(笑)。
イメージをどんどん実現していきたい、
映画監督でもあるジラールさんと、
シルク・ドゥ・ソレイユについて
全部わかっている、
リアリティに落としていかなければならない
リンさんとでは、
僕らの勝手な想像では
対立することだらけなんじゃないかと
思うんです。
ぶつかったりしたことは、ないんですか? |
リン |
この3年間、ジラールとは
いっしょにやっていますが、
言い合ったりするのは、
週に2、3回ぐらいです。
そのときどきで、
彼が勝ったり、私が勝ったり(笑)。 |
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ジラール |
私ももちろん、安全性を考えますし、
サーカスというのは長い期間行うものですから、
長期的に考えて
何がいちばんいいのかを考えます。
でも、やっぱり私の出した案は、
リンから見ると安全性に欠けたりする。
そういうところで、リンが
ストップをかけたりすることがあります。 |
リン |
例えば、シルク・ドゥ・ソレイユのショーでは、
バンジージャンピングをよく使います。
それを、あまり照明をたかずに
ブラックライトだけでやるというアイデアが
出たことがありました。
「それじゃ見えないよ」
「それは要素として入れないといけない」
「危険だし」
こんなふうにいろんな議論を重ねましたね。 |
糸井 |
どっちが勝ったのか、
結果はショーを観てのお楽しみですね(笑)。
今、映画を観ていると、
コンピューターグラフィックスを駆使して
神様しかできないようなことが
画面のなかで
どんどん実現できるようになっています。
しかし、サーカスというものは
人間にしかできないことをやります。
神のやりたいことができる映画の人と、
人間のやれる範囲のことを考える人とでは、
対立するのはあたりまえです。
でも、僕らは、そこにとても
興味がありますし、おもしろいんですよ。 |
ジラール |
おっしゃるとおりです。
映画では、コンピューターの
最先端の技術を使いますが、
それはほんとうに、隠れたテクノロジーとして
使うようにしています。
コンピューターグラフィックに見せない方法も、
映画では充分可能です。
しかし、こういったライブパフォーマンスですと、
もう何も、嘘はつけないです。 |
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リン |
そうですね。人間の体ですから。 |
糸井 |
人間にしかできないリアリティを
こうやって、常設のシアターで
いつでも観ることができるのは、
とてもうれしいことだと思います。 |
ジラール |
人間が醸し出せるスモールパフォーマンスは、
まさにシルク・ドゥ・ソレイユが
提供できるすばらしいものだと思っています。 |
リン |
音楽家についてもそうですよね。
シルク・ドゥ・ソレイユでは、
演奏する方だって、みんな
ライブで演奏します。 |
糸井 |
そうですね。
1回ずつ、全部違うということのリアリティを
僕らはここのショーを観て
ますます思うようになってます。 |
ジラール |
もう今は、さあできた、というところで、
はやくみなさんに観せたくて
ワクワクしているところです。 |
糸井 |
「ZED」について、
演出家として、ディレクターとして、
じつは言いたいんだ、なんてこと、
あります? |
ジラール |
ええっと、11のグループに分かれた
たくさんのパフォーマーが登場します。
その11のアクトのいろんな要素を
ひとつのショーとしてまとめあげる、
というところで‥‥どうしても(笑)、
ここだよ、ということは言えません。
とにかく本公演までは、全体のことを
考えていきたいと思っています。
でも、これだけは言えます。
みなさん、是非、ショーを観に来てください。
それだけです、すみません! |
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糸井 |
もちろん、みんな、
観に来たくてしかたがないです(笑)。
楽しみにしてますから。 |
ジラール |
昨夜のショーも、リアクションが
ほんとうにすばらしかったですよ。
実は、5か月間、パフォーマーたちは
主役である「ZED」の設定を欠いた状態で、
練習をしてきました。
それはたいへんな苦労だったと思います。
そしていま、パフォーマーたちは、
観客と対話をしなくてはいけない段階に
差しかかっています。 |
リン |
それは、観ていただくと
わかると思いますけれども、
ひじょうにおもしろい
シチュエーションになっていると思います。 |
糸井 |
お客さんと「対話」するのではなく、
モノローグ的にやってみる、
ということはありますか? |
ジラール |
いや、モノローグということはありませんね。
やはり、観客のみなさんが
入ってこそのショーだと思っています。
ですから、私もショーをチェックするときは
観客の目で、はじめてショーを観る気持ちで
見るようにしています。 |
糸井 |
いま、トライアウト公演が
行われていますけれども、
公演を重ねれば、ショーは変化していくと
考えていいんでしょうか? |
リン |
ショーのリズム、クラウンの動きへの理解、
いろんな意見を観客の方から知ることで
我々は常に前進していくことができます。
何かを作り上げていくとき、
観客の役割はひじょうに重要だと思います。 |
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(つづきます!)
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