2012年10月、「マームとジプシー」とともに
4年ぶりとなる沖縄を訪れました。
音楽で参加するクラムボンの原田郁子さんも一緒です。
私と、秋田書店の編集者・金城小百合さんが
『cocoon』執筆時に訪ねたところを
もう一度まわりました。

ひめゆり祈念資料館のあとに
アブチラガマ(糸数壕)に入りました。
戦時中は軍の病院として使われたため
負傷した多くの人が亡くなりました。
それと同時に、
自然の洞窟であったために水があり、
人々の命を救った場所です。
10名以上の大人数ではあるけれど、
やはり入るのは緊張しました。
後日、藤田さんは
「入るときに暗闇の圧を感じた。
 静かなのにゴーッという音が聞こえた気がした」
と言っていました。
原田さんは金城さんの腕にしがみついていました。
ガイドさんの説明を受け、
ガマを出たあとはみんな無言に‥‥。



『cocoon』作中でモデルにした、
サンとマユが走った海辺にもいってみました。
沖縄の海は美しいですが、
岩は尖っていて、スニーカーでも危険です。
こんなところを裸足で走っていくのは
正気じゃできないなあ。



夜は金城さんのおじさんの家に招いていただき、
ホームパーティー!
ようやく肩の荷がおりた気がしました。
三線(さんしん)演奏もあったり、
楽しい夜を過ごしました。
私が気に入ったのはヨモギの白和えと、
豚の内臓をこんにゃくや昆布とともに入れた中身汁です。

もしかしたら、戦跡を巡っているうちに
「思っていたのと違う、やっぱり舞台化はできない」
と言われるんじゃないか‥‥
そんな不安から藤田さんや原田さんに
「ショックを受けるかも知れない」
「怖いかもしれない」と
事前にしつこくたたみかけてしまいました。
今となっては「あのときはさんざん脅された」と
笑い話になってよかったです。



10名以上と、大人数だったので
ちょっとした修学旅行気分でしたが、
いよいよ『cocoon』を舞台にするんだ、
と皆が襟を正したような旅でした。
フィクションとはいえ、
沖縄戦、亡くなった人々から
想を得て描いていることは確かなことです。
取り組むことの大きさを目の当たりにして、
押し黙ってしまうことも多かったです。
でも、もう逃げ出すことはできない。


マンガ『cocoon』は
今日さんが沖縄に足を運んだときに
イメージをふくらませて
つくりあげた架空の物語です。
このオリジナル・ストーリーの中心となるのが、
サンとマユという、2人の女の子です。

今回は、この2人を紹介します。


©今日マチ子(エレガンスイブ・秋田書店)

髪をふたつに結っている女の子がサン、
黒髪のおかっぱの子がマユです。

サンは、島で生まれ育ち、
島の女学校に通う女の子。
せっけんの香りが大好きで、
どんなときでも明るく元気な性格です。


©今日マチ子(エレガンスイブ・秋田書店)

マユは、島で生まれたものの、東京で育った女の子。
事情により再び島に戻ってきたところです。
端正な顔立ちと、男の子のようにスッと伸びた背丈から、
一気に女学校の「王子様」となった人物。


©今日マチ子(エレガンスイブ・秋田書店)

お互いに親友だと認めている2人は、
戦争が激化する自分たちの島で
ほかの友達といっしょに手に取り合って、
岩だらけの浜辺を走り抜けることになります。
どちらの女の子も、
ふと、電車でとなりに座っていても
不思議ではないような子たち。
『cocoon』は、
この子たちの目線から見た
戦争が描いているため、
いまの時代の若い人たちにとっても、
すごくリアルに感じられる作品になっているのです。

(おおたか)