HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

カッパとウサギの コーヒーさがし

第16回「大吉くんがやってきた!」編 その1 吹石大吉くん、はじめまして!
山下 きょうはありがとうございます。
わざわざお越しいただきまして、光栄です。
吹石 いえ、こちらこそ。
うちのマネージャーと仲良くしていただいて、
ありがとうございます。

山下 とんでもないです、こちらのほうこそ。
ええと‥‥まずはご紹介を。
こちら、イラストレーターの福田利之さんです。

吹石 あ、カッパさん(笑)。
福田 はい(笑)、
はじめまして、カッパです。

山下 で、福田さん、
もちろんご存じでしょうが、
こちらは女優さんの、吹石一恵さんです。
福田 よろしくお願いします。
‥‥なんでしょう、あの、山下さん、
なぜ吹石さんが
ぼくらのコーナーに
来ていただけることになったんでしょう?
山下 それはとうぜんの疑問だと思います。
手短にご説明いたしましょう。
福田 お願いします。
山下 もう、1年近く前のことなんですけど、
ある日、吹石さんのマネージャーさんから
メールを頂戴したんです。
そのメールに、
「そういえばほぼ日さんに
 うさぎ好きなかたがいらっしゃいますよね?
 吹石もうさぎを飼ってるんですよ」
という一文が記されていたんです。
福田 あー、そこに山下さんが食いついた。
山下 はい(笑)、すかさずお返事をしました。
吹石 わたしのマネージャーも
うさぎを飼っていたんですよ。

山下 そうなんです。
お互い飼い主同士なものですから
うさぎの話で意気投合しまして、
マネージャーさんとメールのやりとりを
ずいぶんさせていただきました。
それで‥‥そうこうするうちに、
マネージャーさんのうさぎ、
ゴン太くんが亡くなってしまうんですよ。
福田 山下さんのとこのパンクも‥‥。
山下 ええ、ぼくが飼っていた
パンクという名のうさぎも先日亡くなりました。
それからも、マネージャーさんとの
文通は続いていて、
「いつか吹石さんに、ほぼ日で
 うさぎのお話をしていただきたい」と、
ぼくはお願いし続けてたんです。
福田 なるほど。
山下 つまり、きょうはついに、
それがかなったというわけです。
吹石 そうですね、ついに。
山下 ようやくお会いできました。
吹石 うれしいです、ほんとに。
福田 それで‥‥。
さっきからあそこに‥‥。

山下 きょうの主役、
吹石さんちの、大吉くんです!
吹石 キーちゃん(大吉くんの愛称)、
ほら、カッパのお兄さんがいるよ。
山下 おとなしいなあ(笑)。
福田 ほんま、かわいらしいですねえ。
きょとんとしはって(笑)。
吹石 のんびりしたコなんですよ。
あと、いま眠いみたいです(笑)。
山下 ‥‥あ! それとそうだ、福田さん、
ぼくと吹石さんには、
すばらしい共通点があるんです。
吹石 そうそう、『うさぎの時間』。
福田 『うさぎの時間』?
山下 うさぎの専門誌です。
これこれ。

福田 ほお‥‥。
山下 こちらの創刊2号に、
吹石さんと大吉くんが
巻頭インタビューに
登場しているんです、ほらぁ!

福田 あ、ほんまや。
山下 ね? すばらしいでしょ?
吹石 このときはもう、
私の顔なんかどうでもいいから、
大吉がかわいく撮ってもらえるように
一所懸命で(笑)。
福田 女優さんなのに(笑)。
山下 大吉くん、かわいいですよー、ほら!

写真/井川俊彦 協力『うさぎの時間』(誠文堂新光社)
福田 あ、かわいいですねー。
山下 うちのうさぎも、
この、5号に載せていただいたんです。

福田 へえーーー。
山下 カメラマンのかたに
写真のプリントをいただきました(自慢する)。
吹石 へえー、わあ!

山下 もう、素直にうれしかった。
吹石 かわいいー!

写真/井川俊彦 協力『うさぎの時間』(誠文堂新光社)
山下 ありがとうございます。
吹石 ロップイヤーですよね?
山下 はい、耳が垂れた種類です。
吹石 ていうかこの、パンクちゃんを抱っこしてる
山下さんがまた、たまらない(笑)。

写真/井川俊彦 協力『うさぎの時間』(誠文堂新光社)
福田 ある意味、たまらないですね。
40過ぎのおっさんが(笑)。
山下 ほんとだね、おっさんがね(笑)。
吹石 いやいやいや、
そんなことないですよー。
あ、これもかわいい。

写真/井川俊彦 協力『うさぎの時間』(誠文堂新光社)
福田 ‥‥あの、山下さん、
こんなこと言うのはあれなんですが‥‥。
山下 なんでしょう。
福田 せっかく吹石さんが
「ほぼ日」に登場されるのに、
ぼくなんかいないほうがよかったんじゃ‥‥。
山下 福田さん‥‥そんなこと言わないでください。
これは、
「カッパとウサギのコーヒーさがし」
じゃないですか。
福田 はい。
山下 「カッパとウサギの」なのに、
いっつもカッパの話ばかりでしょう?
福田 ‥‥え?
山下 ウサギの話はちっとも出てこず、
カッパばっかり!
福田 あのですね‥‥
山下 不平等!
福田 ちょ、ちょっと山下さん(笑)、
それは山下さんのさじ加減というか、
山下さんが自分で
カッパカッパ言うからやないですか(笑)。

山下 それはそうかもしれないですけど‥‥。
でも、このコーナーに吹石さんをお招きすれば
思う存分、うさぎの話ができると、
そう思ったんですよ。
福田 そうですか‥‥。
ただ、うさぎのことをよく知らないぼくが、
お邪魔にならないか、それだけが心配で。
吹石 あのぉ‥‥
もしかしたら福田さんは、
うさぎがあまりお好きではない?

福田 や、そんなことはないんです!
好きなんです、飼ったことかてありますから。
山下 え、うそ! はじめてきいた!
福田 ‥‥いや‥‥あの‥‥むかし。
山下 えーー、そうだったんですか。
吹石 いつごろ飼われてたんですか?
福田 幼稚園のころです。
山下 そうかぁ、
福田さんも飼ったことがあったんだぁ。
福田 いや、でも‥‥
これはほんとに言いづらいんですけど‥‥。

山下 ‥‥なんですか?
福田 あの‥‥
すぐに死んでしまったんです。
吹石 ‥‥ああ。
山下 ‥‥すぐに?
福田 あっという間に。
山下 それは、どういう飼い方で?
福田 あれは、外でした。
山下 外で。
どうして亡くなったんでしょう?
福田 いや、それは‥‥。
吹石 言ってください。

福田 あの‥‥。
吹石 カラスですか? 野犬ですか?
福田 いやいや、そういうのではなく。
理由はわからず、
すぐに死んでしまったんです。
吹石 そうですか‥‥。
福田 それ以来、動物が飼えなくなって‥‥。
山下 うーーん‥‥。
福田 す、すみません。
山下 でも、あれですよね、その時代は
うさぎの飼い方がよく知られてませんでしたよね。
ひとつの小屋に
何羽もいっしょに入れられたりして。
吹石 そうでしたね‥‥。
福田 すみません、暗い雰囲気にしてしまって。
なんだかその‥‥うさぎが好きなふたりの前で
このことを黙っているのは
いけないような気がしたので‥‥。
山下 それで、まさかのカミングアウトを、
このタイミングで。
福田 はい。
山下 ‥‥わかりました。
きょうはもう、そのことは忘れましょう。
福田 ありがとうございます。
山下 気を取り直してまいりましょう!
吹石 そうですね、気を取り直して。
福田 ぼくはがんばって、
おいしいコーヒーを淹れます。
山下 そうですよ、がんばってくださいよ。
‥‥吹石さん、すみません、
こんなへんなコーナーにお呼びして。
吹石 いえいえ、
ほんとににもう、
きょうはお仕事じゃなくて
趣味の時間だと思ってますから(笑)。

山下 お気遣いを、ありがとうございます。
福田 気持ちがらくになりました。
山下 吹石さんは、
あまりコーヒーを飲まれないと
マネージャーさんにうかがったのですが‥‥。
吹石 そうですね。
でも、いい香りのコーヒーを
人が飲んでると、
「ちょっとちょうだい」
ってほしくなるんです。
香りがいいのは、ちょっと好きですね。
福田 きょうはぼくらの大好きな豆を持ってきました。
吉祥寺の「ロカリテ」というお店の豆です。
こちら、匂いをかいでみてください。
吹石 ありがとうございます。
‥‥あ、いい香り、すごくいい香りです!

福田 ‥‥山下さん、やりました!
山下 よかったです。
その調子でがんばってください。
福田 はい‥‥。

   「福田くん、がんばれ」(大吉)

(福田さん、自分で暗くしたムードを取り返して!
 と願いつつ、あしたにつづきまーす)

2010-11-26-FRI
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