さあ、福田さん、 いろいろやらかしていますが、 コーヒーがおいしければ万事オーケーです。 |
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はい。 |
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ここはひとつ、よろしくお願いします。 |
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よっしゃ(真顔)。 |
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そのあいだに吹石さん、 もっとうさぎの話をしましょう。 |
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吹石 | そうですね、せっかくの機会ですから。 うさぎのなにをお話ししましょう? |
お湯を‥‥(真顔)。 |
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たとえば‥‥「足ダン」のこととか。 |
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吹石 | はいはい、足ダン。 |
あれは最初、びっくりしますよね。 |
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なんですか? 足ダンって。 |
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うさぎはですね、怒ったときとかに、 後ろ足をこう‥‥ね? |
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吹石 | ダーンって。 |
たたきつけるんですよ、床に。 それが思いのほか大きな音なんです。 後ろ足の力はすごいんで。 |
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へえーー。 |
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けっこう知られていない習性だと思います。 |
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吹石 | あと、かわいいのは、 寝るときに、こうクルンって。 |
そうそう! 空中で回転してね、 柔道の受け身みたいに、 ステーンって、横になる。 |
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吹石 | あれ、なんででしょうね? 「せーの‥‥ヨイショ!」って横になる(笑)。 |
ねえ‥‥。 それと、ほら、顔を洗うでしょ?! |
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吹石 | そうそう! かわいーですよねー。 |
ネコみたいにね、顔を洗う。 耳もきれいに洗いますよね。 |
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吹石 | うちのコはたぶんふつうのうさぎより ちょっとだけ顔が大きいみたいで、 耳の先まで手が届かないんです。 でも一所懸命先っちょまで洗おうとして‥‥。 そういうところが、ぜんぶ愛おしい(笑)。 |
それは愛おしい(笑)。 うちのは耳が垂れてるから 耳を洗っていると、 まるで女の人が髪を洗ってる姿のようでした。 |
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吹石 | 愛おしい〜(笑)。 |
(笑) |
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吹石 | パンクちゃんは、 焼きもち焼かなかったですか? |
焼きもち、それは誰にですか? |
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吹石 | 大吉は、わたしが長電話をしてるだけで、 ダン! ダン! って。 |
あー、怒るんだ(笑)。 愛されてますねー。 |
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吹石 | あと、うさぎは夜行性なので 夜遅くなるにつれて 絶好調になってきますよね? |
そう、目がぱっちりしてきて。 |
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吹石 | でも大吉には、 「わたしがリビングの電気を消して ベッドの部屋に行ったら、 あなたがたとえ夜行性でも もう遊ばないよ」って教えてあるんです。 |
へえー。 |
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吹石 | だからリビングが真っ暗になれば、 大吉はシーンと静かになるんですよ。 |
いいコですねぇ。 |
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吹石 | ただし、となりの寝室で わたしが起きてて本を読んだり テレビをみている気配がすると‥‥ダーン! |
(笑) |
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吹石 | もう、怒る怒る(笑)。 「起きてるんだったら遊んでよ!」って。 |
いいなぁ(笑)。 |
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吹石 | 朝もそうなんです。 わたしがベッドの中でぐずぐずして、 ちょっとメールしたりしてると‥‥。 |
ダーン! |
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吹石 | 「起きてるんなら、あいさつに来て!」 |
かわいいなぁ(笑)。 |
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吹石 | 山下さんのパンクちゃんには、 なにかそういう怒りのポイントがありました? |
うちのはねぇ、鍋がきらいでした。 |
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吹石 | 鍋? |
鍋。 ル・クルーゼの鍋があるじゃないですか。 あれに「おたま」が刺さった状態で 床に置いておくと、 もう、怒る怒る(笑)。 |
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吹石 | へえー、なんでだろう‥‥? |
なんかこう、 動物っぽくみえるらしいんですよ。 「おたま」は、しっぽなんでしょうね。 |
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吹石 | へえー。 |
たしかパソコンに写真が‥‥。 ええと‥‥あったあった、これです。 |
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吹石 | わーーー! |
へっぴり腰で近づいてるでしょう? ぎりぎりまで鍋に近づいて、 わーっと小屋に戻ってから‥‥ダン! |
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吹石 | かわいーー(笑)。 |
ずーっとそれを繰り返すんです。 |
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吹石 | ほかの動物だと思ってるんだ(笑)。 |
そう、自分のなわばりに入ってきた敵。 |
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吹石 | かわいいー。 ほんと、それぞれのうさぎに、 それぞれのおもしろい話がありますよねー。 |
そうですね、 個性はかなりあると思います。 |
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吹石 | ‥‥なんか、ごめんなさい福田さん。 |
放ったらかしにして。 |
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や、そんなことないです。 ぼくはコーヒーに集中してるので。 どうぞ思い切りうさぎの話をしてください。 |
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すみません、ありがとうございます。 ‥‥きょうの大吉くん、調子はどうですか? 慣れない環境で緊張してるんじゃないでしょうか。 それがいちばん心配で‥‥。 |
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吹石 | 大丈夫です。 なんかずっと落ち着いてるみたいです。 |
ほんとうに、おとなしい‥‥。 |
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吹石 | のんびりしたコなんですよ。 |
‥‥‥‥。 |
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‥‥‥‥吹石さん。 |
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吹石 | なんですか? |
‥‥大吉くんの、頭をなでてもいいでしょうか。 |
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どうぞどうぞ。 |
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いいですか。 ‥‥それでは‥‥(はいつくばる)。 |
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‥‥‥‥こんにちは。 |
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吹石 | キーちゃん、 山下さんが、こんにちはって。 ‥‥あ。 |
吹石 | いま、大吉のほうからグイッと近づいた。 |
‥‥きみはいいこだね。 人見知りをしないんだ。 |
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吹石 | よかったねぇ、大吉、 いいこいいこしてもらって。 |
‥‥‥‥‥‥。 |
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吹石 | ‥‥‥‥‥‥。 |
‥‥‥‥あ、あのぉ、すみません。 恍惚の人になっている山下さんに、 水を差すようでほんと申し訳ないんですが。 |
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‥‥はい。 |
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コーヒーがはいりました。 |
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あ! こちらこそすみません! ありがとうございます、できましたか。 ‥‥おおー。 |
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吹石 | わあー。 |
入魂の、ドリップコーヒーです。 |
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吹石 | いい香り‥‥。 |
ちょっと、あれですね、 西日が入ってきたので明かりを変えますね。 (ブラインドをおろす) ‥‥大吉くん、フラッシュをたいても 大丈夫でしょうか? |
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吹石 | ええ、怖がらないと思います。 |
じゃあ、カメラの設定も変えて‥‥と。 では、吹石さん、 どうぞ召し上がってください。 福田さんが淹れたコーヒーを! |
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吹石 | はーい。 |
‥‥‥‥(固唾をのむ)。 |
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‥‥‥‥(固唾をのむ)。 |
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吹石 | ‥‥んー。 あ、おいしい、おいしいです。 |
‥‥ありがとうございます。 |
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‥‥よかったぁ。 |
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吹石 | コクがあるけど、 苦みが、いやな苦みがなくて‥‥。 |
そうですか、大丈夫ですか。 |
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吹石 | はい、飲みやすいです。 |
いい豆をていねいに淹れると たいがいはブラックでも大丈夫じゃないかと。 |
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吹石 | はい。 味見でちょっとだけ ブラックを飲んだことはありますけど、 カップ1杯をこうして 最初から自分でいただくのは初めてです。 |
そうなんですか。 でも無理はなさらないでくださいね。 |
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吹石 | でも、これだったら飲めます。 |
ありがとうございます。 |
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吹石 | ‥‥おいしい。 なんか、コーヒーに対して ちょっと前向きになれました。 苦いと思わずに、飲めるものなんですね。 |
‥‥福田さぁん、よかったねぇ!! |
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よかった、ほんまによかった(笑)。 |
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(福田さん、面目躍如! あしたにつづきまーす) |