第8回 カレーには、神が無数に。
最近ぼくが思ってるのは、
カレー作りって、
ほとんど儀式的なものなんですよ。
うん(笑)。
それぞれにレシピがあるじゃないですか。
はい。
で、ぼくはいろんな人のレシピだったり、
自分のレシピだったり、
さまざまなレシピを試して、
それを整理する作業をやってるんですよ。
カレーっていうものの、
いちばん正しい作り方を暴きたいと。
何々をするときにはどうするのが正解だっていうのを
全部整理をしてる作業の最中で、
いちばん思ったのは、
ルール化することは、できることはできても、
ルールと関係ないことをみんながいっぱいやってる。
はい、はい。
でもそれってほとんど、
その人にとってのおいしいカレーを作るための
儀式みたいなものなんです。
うんうん。
その儀式は、AさんとBさんでは
もう全く違うんですよ。

うん。
で、そこにぼくが行って、
君の儀式はここを入れ換えた方がいいよとか、
この君の儀式はこれを外して、
代わりにこっち入れた方が
おいしくなるって言っても、
「そういうことじゃないじゃん」と。
違うよね(笑)。
そうですね。
「ほぼ日カレー部」で
タモリさんのカレーのお手伝い
したことがありましたよね。
タモリさんのレシピで
カリ~番長がサポートに入って作る。
いちばん最初にタモリさんと
糸井さんと打ち合わせをやって、
タモリさんのレシピを見せてもらって、
これを現場で一緒に作りましょうって話をした。
うん。
あの打ち合わせが終わった日に、
リーダーとぼくと2人で別の喫茶店に行って、
レシピを見ながら言ったのは、
「このタモリさんのレシピさ、
 もっとおいしくなるよね」。
そう思うと思う、うん。
こことここはやり方こうした方がいいし、
これ要らないし、
これ入れるんだったらこっち入れた方がいいから、
というような話をしたんです。
けれども現場に入り、
タモリさんの横に付いて
指示の通りにやってると、
だんだんだんだん、
あ、これはタモリさんの味なんだと思って。
そうなんだよ。
だから、「これはもっとおいしくなるね」
っていうのは、何ていうか、掟破り。
で、結果的に、
食べるとすごくうまいわけです。
つまりタモリさんの家で
ごちそうになるっていうことだからね。

それにタモリさんも
すでにいろんな作り方をして、
最終的にそうなった可能性もありますよね。
そうそう、もあるかもしれない。
だからタモリさんのレシピが
正しいかどうかじゃなくて、
タモリさんの儀式に
則らないといけないんですよね。
それをカリ~番長の儀式にするとか、
正しくはこうするべきだとかっていう考え方とは
別のことなんだなと。
それは、音楽だね。
あるいは信仰?

今言ってるような話が
ちゃんとできるん間柄だったら
「こうすれば」って言えるんですよ。
ただ、怒らないでほしいっていう。
そう、そうなんですよ。
冒頭に糸井さんがおっしゃってた、
奥さんのやりかたと自分のやりかたが違っても、
それもあり、と思わないと
人のカレーをおいしく思えないっていうのは、
その通りだと思うんです。ほんとに。
そうだね。
おいしいもの、人のカレーも。
で、一番をとにかく自分として
覚えとこうっていうのは、
ずれてない方が楽しいからなんですよ。
ぼくはあれが食いたいんだ。
じゃないと自分で作んないですよ。
だって、おいしい店に行けばいいんだもん。
カレーが安上がりだからつくる、
ってことじゃないと思うから。
確かにそうですね。
タモリさんのカレーはね、
「タモリさんはこういう人なんだ」みたいな。
つまり、歌を聞いてるようなんですよ。
同じ楽譜なんだけど、演奏とか歌は違うわけで、
ぼくならこう、ってのは、
話が違うんだよね、やっぱね。
人のカレーを食べるっていうのは
人間性が試されますね。
怖い(笑)。
いや、そうだと思うよ。
「ぼくならこう」は
「ぼく」が作るときにすればいいことで。

確かにそうですね。
あの、飯島さんのカレーは
飯島さんのハンバーグとかと
横に並ぶものなんだよ。
で、飯島さんのハンバーグっていうのは、
ぼくは自分でハンバーグ作んないから、
もういいの、飯島さんで。
うん、うん、うん。
でも、カレーは自分で作るんで、
飯島さんとダンスができる。
で、飯島さんのカレーとぼくのカレーがあったら、
カレーはぼくのカレーを食べるの。
ハンバーグは絶対そういうことはないんだよ。
カレーだけ、神が無数にいるんだ。
(笑)。
そうですね。でもインスタントカレールーを
使うことによって、その範囲が狭まりますね。
そうだね、大丈夫の範囲になる。
こわいこわい。人のカレーに口挟まないようにします。
それにしても深い話になってきましたね。煮込まれて。
つづきは、明日です!(武井)
2012-01-08-SUN
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