第9回 辛さ=おっぱい理論。
── 3人とも辛さのことは
おっしゃらないですね。
辛さこそ、みんな、
自分の好きな辛さがあるんですよ。
それはなかなか人と分かち合えない。
困るのは、みんなのためにイベントとかで
100人分のカレーをつくるとき、
100人分の辛さに合わせらんないってことです。
よく、カレーのお店で、
辛さを足せる調味料がありますよね。
あれはどういうことなんでしょう。

あれはね、分かります。
あれはおっぱいの大きさです。
‥‥?!
おっぱい、ですか(笑)。
全員 (どよめき)
何カップだからすてきっていうのと同じです。
つまり、AカップとGカップは、
Gカップがいいって思ってる人がGカップ好きで、
Aカップのことをだらしがないと言う。
でも、違うんです。
AからGまで、Zまで、全部違うんです。
── みんないいこ。
みんないいこ。
で、辛さは刺激の強さですから、
数字で出すことができる。
カレーのおいしさをそんなに分からないときには
辛い方が大人のカレーだとか、
辛い方がうまいんだと思い込む。
コーヒーの通はブラックだと言う人もそうだよ。
ああ、はい、はい。
もっと通になると砂糖入れますよね。
ああ、なるほど。
だから、こうでなければみたいなところで
数字で縛れるものは
ぼくは貯金の高とか
おっぱいの大きさと同じで、
意味がないと思う。

カレーの辛味がそのおっぱいの大きさと
ちょっとだけ違うのは、
3倍の辛さが好きだった人が
3倍に慣れてくると、
4倍が好きになってくるということでしょうか。
そして4倍に慣れてくると
5倍が好きになってくるんですよ。
際限なくエスカレートするんです。
おっぱいもそうじゃない?
そう‥‥ですか?
Bカップ好きだった人がCに行きます?
グラビアの女の子のおっぱいは
あっきらかに歴史的に大きくなってますよ。
あー、そういうことですか。
そうか、そうか。

で、とうとうアメリカなんかで、
スイカみたいになってる人がいるでしょ。
モンスター化してくんですよ。
「すてき」から「すごい」になってくんですよ。
なるほど、なるほど。
いつか、でもそれがAに戻るってことは‥‥。
ないですね。
ないんですか。
ないですね。でも、
「あれは下らなかったな」
って気付く人はいると思う。
ぼくなんか、もうそれです。
(笑)。

そうか、そういう意味じゃ一緒です。
確かに。
わたし、高校時代、
中村屋のカレーが食べれなかったんですよ。
辛くて?
辛くて。でも今は食べれます。
強い方に強い方に行っちゃうから。
ラーメンの汁も辛くなってますよね。
あれ、もう、戻れないですよね。
脂が多くなってうま味が強くなって、
全部濃くなって。
あれ、おっぱいだと思いますね。
でもその糸井さんが今おっぱいの大きさに
反応しなくなったように、
カレーの辛さも、リセットするときが
くるんじゃないですか?
数字1つで言いやすいものに
依拠するっていうのは、
やっぱり若いときまでじゃないですかね。
やっぱ人柄だ、とか、
ぼくは何となくあいつの雰囲気が好きなんだとかね、
言い出すわけですから。
うんうん。
鉄道マニアなんかでもさ、
実はぼく、80年代以後の
これが好きなんだよねとか、
人が価値を置かないものでも
自分の価値で再編成されるじゃない。
だから他人の価値観を
すっと借りてくるんじゃなくて、
自分の価値観をもう1回組み立て直さないと。
‥‥水野さん、大変だと思うんだよ。
こんだけ知った上で、
体系そのものが動いてるじゃない、
うごめいてるじゃない。
そうなんですよね。
おっぱいコレクターみたいなもんですかね、
そしたらね。
全部知っておきたいみたいな。
そう、全部知らないと嫌なんですよね。

けれども娼婦は
お客さんがいちばん遠い存在なんですよ。
うん、うん。
だからキスはしないとか、
あったんですよ。
水野さんはカレーと隣り合わせに
いつもいるんだけど、
地球一周していちばん離れたものでもあるわけ。
だって、さっき、平気で
キャベツの千切りっつったじゃないですか。
そうですね。ぼく、しばらくやめてたんですけど、
最近またカレーの食べ歩きを始めたんです。
いわゆる職業病だと思うんですけど、
食べると、あ、おいしいって思う。
おいしいと思った瞬間に、
これは何と何がおいしいんだとか、
こうやってるからおいしいんだとか。
これはあのテクニックを使ってるな、
になっちゃうんですよ。
で、そうすると途端につまんなくなる。
でしょうね。
分かります。
だから、最近、そういうのを反省してて。
確かに何か、こういう味であってほしい、
みたいのから外れると
おいしくないって思っちゃうけど、
でも実は知らなかっただけで
すごく何かがあるかもしれない。
そうそうそう。
あるいは、7、8年前は大好きだったのに、
今はあんまり好きじゃないと感じる。
それは、この7、8年間の中で、
ぼくもテクニックが上がってるから。
でも、このカレーはこのカレーの、
何か魅力がほんとはあるのに、
そこに気付けなくなっちゃって、
それを楽しめなくなっちゃってる自分がいて、
もったいないと思って。
今、だから、おいしくないとか
今いちだと思ったカレーを探る
キャンペーン中なんです。
そうすると、世の中にはおいしくないカレーが
いっぱいあるわけですが、
これはおいしくないなと思ったときに、
ちょっとね、ワクワクしちゃうんです。
自分がおいしく感じないってことは、
何か魅力があるんじゃないかって。
自分の全然及びもつかない、
魅力があるんじゃないかと。
要するに再構成ですよね。
それはAKBですよ。
あれは、市場がどういう価値がいいのっていうのを
どんどん集めていったら、
そこからこぼれちゃう子の中に
一所懸命さだとかを見いだして応援する。
今は水野カリ~番長のAKB48化ですよ。
そうですね。ぼくのAKBプロジェクトが
始まってるわけですね。
うん。で、AKBに入れない子で
もう1チームできないかみたいな、
そういうことだってある。
それは専門的なことをやってると、なりがちで、
ぼくも、人の文章なんかで、
うまいかへたかで言ったらへただけど、
これはいい、っていうもの、あるもの。
大衆化していくと、
みんなにヒットしやくなるんだけど、
誰かにとっての特別なものではなくなってくる。
ああ、そうですね。

おっぱい‥‥そういうものですか。
そういえばぼくの学生時代に
「辛いカレーブーム」がありました。
渋谷のボルツの20倍カレー、
食べに行ったもの。
痛かった。辛いというより。
さていよいよ座談会も終盤に!
つづきは明日です。(武井)
2012-01-09-MON
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