東京カリ〜番長・水野仁輔さんが選ぶ カレーの思い出。
#その11

こんにちは。
アンチエイジングと言う言葉をよく耳にします。
辞書を引くと「老化防止」と書いてある。
ずっと若くありたいという人たちに響く言葉なのでしょう。
でも、カレーの世界ではエイジングの方が大事です。
この場合、その意味は「老化」ではなく「熟成」です。
先日、代官山蔦屋さんで実施している
「白熱カレー教室」で、
「自分史上最高のカレー粉を作ろう」と題して、
カレー粉についてたっぷり90分語る機会がありました。
カレー粉を作る上で重要なのが、エイジングなんですね。
ブレンド(混合)してロースト(焙煎)したカレー粉を
最後に密閉容器に入れてエイジング(熟成)させる。
そうすることでまろやかな香りが生まれるんです。
問題は、どのくらいの期間、エイジングさせればいいのか。
開発メーカーによって、推奨期間は異なります。
1週間でいいというのもあれば、数か月というのもあるし、
半年とか1年、2年‥‥と要するに、バラバラです。
僕の中でのエイジング目安は、期間ではなく感覚です。
香りをかいで経過を観察すると、
その香りがぐっと深まるというか、
変化するタイミングがあるんです。
なぜかはわかりませんが、ほんのりと
“杏子”のような甘酸っぱい香りがする。
これがエイジング完了の合図。
イベント会場に持ち込んだ僕のオリジナルカレー粉の
香りをかいだある参加者がアンケート用紙に
「私は梅干しの香りがしました」と書いてくれました。
そうそう、それそれ!
実は僕も昔は梅干しだ、と思ってたのですね。
ただ、梅干しというほど強い香りではない、と考え、
今は杏子を基準にしてるんです。
ただ、カレー粉の完成の合図が梅干しや杏子だなんて、
おかしな話だな、と思います。


051
マドベーゼ/女性/32歳

10年ちょっと前、当時好きだった彼の家によばれ、
彼が作った大きなじゃがいもがゴロゴロ入ったカレーが
懐かしいです。
料理はあんまりしないと言ってたのに、おいしくて。
彼がカレーに失敗はない。と言ってたことを思い出します。
ついでに、当時大好きで二人でよく聴いていたくるりの
『カレーの歌』の『とても小さな窓の側で〜♪』の歌詞が、
彼の小さいアパートの窓とリンクして
懐かしい気持ちになります。

カレーに失敗、ありますよ〜。
ただ、失敗しにくい料理ではあるのかもしれません。
くるりの『カレーの歌』は、切ないメロディで
しみじみする歌ですよね。
歌ってよく聴いていた頃の気持ちとすごくリンクして
いい思い出になりますが、カレーの味もそうなんですよね。
そのカレーの味の記憶と当時の出来事や
一緒にいた人のことをよく思い出す。
そんなカレーと歌が昔の恋とリンクしてるだなんて、
最強じゃないですか!
うらやましいです。

052
mica/女性/50才

小学生の時。
法事で母が泊まりがけで出掛けたため、
父が夜、カレーを作ってくれたことがありました。
我が家のカレーは、父も当時のワタシも
脂身が苦手だったので
使うのは「合い挽き肉」が定番でした
(ルーはグリコのワンタッチカレー甘口)。
が、父が作ったカレーには、ウィンナーが入ってました。
わたし的には「それもありだな。おいしいかも」と
肯定的に見ていた記憶があります。
が‥‥、
ルーを入れる前、鍋が煮立った時
父は‥‥、煮汁を全部、流しに捨てました。
自分で作ったことはなくとも
「捨ててはならない」ことくらいは、知っていました。
でも、黙々と作っている父を前に言えませんでした。
その後、水を新たに足して再び煮る父。
ドキドキ見守るわたし‥‥。
これがわたしの「人生で一番不味いカレー」です。
おそらくコレを上回るものは出て来ないでしょう。
大正生まれで赤紙ももらった父は、
食べ物は「空腹を満たせばいい」という考え方で、
あそこまで食べ物に執着のない人を見たことはありません。
出来上がったカレーも、フツーに食べていました。
わたしも‥‥、黙って食べたと記憶しています。
父が料理らしい料理を作っている姿は、
後にも先にもその時1度しか、見たことがありません。
父も母も亡くなり、今のわたしのカレーはおそらく
母由来の味なのだと思います。
母が料理好きで、つくづくよかったと思います。
今でもひき肉のカレーは作りますが、
ウィンナーのカレーは作ったことはありません。
もちろん、煮汁を捨てる勇気はありません!

なにか胸に迫る思い出ですね。
ドキドキします。
なぜ、お父さんは、煮汁を捨てたんでしょう?
味見して「失敗した」と感じたからなんでしょうか。
具はもったいなくて捨てられなかったのでしょうか。
煮汁がおいしくないなら具を残して水を足しても
また煮汁はおいしくなくなる可能性があることや、
煮汁をすてたら具に味は残っていないから
その具を再び煮ても味がしない可能性があることは、
おそらく想像がつかなかったんでしょうね。
いずれにしても小学生のときに目の前で父親が
黙って煮汁を捨てる行為を見た衝撃は、
相当なものだと思います。
人生で一番不味いカレー、すごい思い出ですね。


053
ふく/女性/43歳

我が家のカレーの付け合わせは
福神漬、らっきょう、しらすでした。
中でもしらすが一番人気で、
何がなくてもしらすは絶対ありました。
まぜると即席シーフードカレーっぽい味になって
好きでした。
そして、子供の頃からカレーの時も箸。
(スパゲッティの時も箸でしたけど。)
高校時代に友達を呼んでカレーをごちそうしたときに
しらすも箸も普通じゃないと知って、目から鱗でした。
両親が岡山出身なんですけど、何か関係あるのかなぁ。

付け合せにしらす!!!
初めて聞きました。
ちょっといいかも。
即席シーフードカレーってなんとなくわかります。
しかもお箸でカレー!!!
これも珍しい。
日本一歴史のあるインド料理店「ナイルレストラン」の
オーナー、G・M・ナイル氏は、カレーを食べるときは
必ずフォークを使うそうですよ。
それにしてもなんだかすごい家庭ですね。
岡山とは関係ないと思います。
独創的なセンスを持ったご両親を
誇りに思ってください。


054
ロンリーでオンリー/女性/41歳

大学を卒業し、社会人となって3年がすぎた頃。
就職して海外へ行っている友人が久しぶりに帰省するので
仲間数名で集まることになりました。
当日待ち合わせの地元居酒屋へ行くと、
幹事役の友人がきていません。その理由は、
「家の晩ごはんがカレーだから」。
私はそのマンガみたいな理由が真実の理由だと考えられず、
もしやメンバー間で揉め事でもあったかと勘繰るも、
本当に、素直に、カレーだから。
さらに驚いたのは、その理由をその場にいた全員
(私を除く)があっさりと、
しかも大いなる共感とともに受け入れていることでした。
私はひとり、心の中で
おうちカレーへの認識を改めたのでした。

よっ! 名幹事!
すごいなぁ。
この幹事さんは、仲間の間ではカレー好きで知られてる
存在だったんでしょうか‥‥。
「ま、あいつが言うなら仕方ないか」と。
そうじゃなかったら、仲間も戸惑いますよね。
「は!? カレー? なにそれ?」と。
これは東京カリ〜番長の僕がマネしても、
「は!?」と言われそうな気がして自信ありません。
そう考えると幹事よりも素敵なのは周りのメンバーですね。
おおいなる共感と共に受け入れるだなんて、
どんだけ器が広いんだ!
本当に本当にいい仲間を持ってますね。
うらやましいです。

055
それで梅干が・・・/女性/50代

短大進学で初めて県外生活をしたときのこと。
友達の話、町にある店、寮のご飯、所変われば
ご飯の常識って違うんだなぁ‥‥と思っていました。
衝撃的だったのは入学して半年ほど経ったある週末、
地元自宅通いの友だちのうちに泊まりに行ったときのこと。
夕ご飯はカレー。具はお肉、ジャガイモ、にんじん、
たまねぎといたってスタンダード。
カレー皿にご飯とカレー、福神漬けとらっきょ、
梅干(梅干?)はご自由に。
そして左手側にお茶碗に盛った白いご飯。
?????
友だち一家は元気良く「いただきま〜す!」。
どどど、どうして、カレーライスに白ご飯?
尋ねる私に「もぉ〜カレーライスはおかずじゃん。
ご飯とおかず、なんでびっくりするん?」
これは地域の風習じゃなくて
友だちのうち限定の風習でしたが。
ちなみに箸とカレースプーン両方置いてありました。

す、すごい。
カレーライス with ライスって‥‥。
カレーライスがおかずで主食がライス。
ライスだぶっとるがな!
と関西人でもなんでもない僕でも
へたくそな関西弁で突っ込みたくなります。
そういえば、関西の人は、お好み焼きをおかずに
ライスを食べると聞いたことがありますが、
それって本当ですか?
本当だとしたら、そのカレーライス版だと思えば‥‥。
いや、それでも変です。
カレーライス with ライス、ではなく、
カレーソース on カレーライス、というのはありますよ。
これは単純に「カレーソースの大盛り」ですから。
カレーソース on カツカレーライス、もあります。
神保町の「まんてん」では
カレーライスの上にトンカツが乗り、
さらにその上からカレーソースをかけてくれる。
でも、カレーライス with ライスはすごいです。
規格外です。いい話を聞けました。
しばらく余韻を楽しみます。

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いろんな思い出をありがとうございました。
では、また次回。
みなさんの“カレーの思い出”をお待ちしています!

2013-07-19-FRI
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