東京カリ〜番長・水野仁輔さんが選ぶ カレーの思い出。
#その13

こんにちは。
突然ですが、みなさんに質問です。
あなたにとってカレーとはなんですか?
きっとこんなこと聞かれても困ってしまいますよね。
カレーの思い出くらいならまだしも、
「あなたにとって」だなんて。
でも「カレー」の部分を
自分にとって大事なものに置き換えたら、
色々と考えが膨らむかもしれません。
あなたにとって家族とは? 恋人とは? 友人とは? 
他にもあります。仕事とは? お金とは?
ゴルフがたまらなく好きな人だったら、ゴルフとは?

「あなたにとってカレーとはなんですか?」と尋ねると、
そこから30分でも1時間でも
話が膨らんでしまう人たちがいます。
カレー店のシェフたちです。
僕はこの質問を全国のカレー店のシェフに尋ねて回り、
その回答を活版印刷した
オリジナルコースターを作っています。
題して「カレーの金言」です。
これまで10人のシェフに取材をしてきましたが、
独りとして同じ回答はありませんでした。
武器、分身、共感、魔法、幻想、住処、相棒‥‥。
みなさん、カレー抜きには成立しない人生ですが、
普段は「カレーとは?」だなんて考えたことがないようで、
色々とお話をしていく中で
ひとつの言葉にたどりついていきます。

中にはこんな言葉もありました。
「カレーとは味噌汁である」
カレーは味噌汁ではなく、
カレーなんですから、おかしな回答です。
でも、そのシェフにとっては、味噌汁と同じくらい、
何気ない普段の食事である、ということなんですね。

この「カレーの金言」収集活動は、
僕の趣味の一つになっています。
100くらい集めたら、どこか小さなギャラリーでも借りて、
個展でもしたいと思ってます。
壁に言葉が書かれたコースターがずらり。
変な個展ですね‥‥。


066
くりたろ/女性/37歳

夜ごはんは大きな鍋でカレー。
煮込んでいい香りがしてきた頃、
蛾が鍋のなかに!!
粉のような、キラキラしたものも
浮かび、ワー!! ギャ~! と大騒ぎ。
もちろんおたまでとりのぞかれましたが 、
よそわれたカレーを見ても、テンションは低いまま
おなかもペコペコだったので
ひとくち食べてみると『おいしい‥‥』
皆もそう思ったのでしょう、
おかわりをする人多数。
虫くらい大丈夫なんだと実感した出来事でした。

すごい話ですね。
アウトドアでカレーを作っていて
色んなものが入ってしまった話は聞きますが、
蛾が入るというのは聞いたことがありません。
蛾カレー。
茶色いカレーソースの表面に
キラキラした粉のようなものが
浮かんでいる様は想像がつきます。
が、本当にすごいのはその後ですね。
ひとくち食べて、「おいしい」ってとこ。
空腹こそが蛾をも凌ぐ最大のスパイスである。
20年近く前、インドのコルカタで食べたカレーに
バンソウコウが入っていたことがあります。
皿の縁に取り出し、通りかかった店員に伝えると、
彼は、テヘヘと言った調子で少年のように笑いました。
それを見て、僕は、しょうがねえなぁ、といった調子で、
学校の先生のような顔をして、
再びそのカレーを食べました。
懐かしい思い出です。

067
Maki/女性/48歳

小学生の時、仲の良かった友達の家で頂いた
夕食が忘れられません!
「夕食はカレーだよ」
ということでとても楽しみにしていたのですが。
カレーと一緒に‥‥みそ汁が出て来たんです!
カレーとみそ汁‥‥我が家では見たことのない、
衝撃的な組み合わせでした。
よそのお家ではこんな風にカレーを食べるんだ‥‥
と目が覚める思いでした。
まさに私にとって
「食のカルチャーショック」初体験となりました。
今思えば、カレー+みそ汁の組み合わせって、
いかにも昭和っぽくて良いと思いませんか?

カレーと味噌汁。
僕はこの「カレーの思い出」コーナーで
過去にも書いたことがあるような気がしますが、
カレーと味噌汁の組み合わせ、大好きなんです。
とくに市販のカレールウで作る家カレーみたいなものには、
あの味噌汁の滋味がたまらなく合う気がします。
「カレーとは味噌汁である」とはだいぶ違いますが、
「カレーには味噌汁である」とは思います。


068
hana/女性/33歳

私と年の離れた姉が
まだ高校・中学生くらいの頃でしょうか、
一緒にカレーを作りました。
バーモントカレーとかで、
りんごとはちみつを入れるとおいしいとか、
聞いたような‥‥
それでりんごのすったものを
ルーとともに入れたのですが‥‥
もんのすごいりんご味!
やたらと甘い感じで、
決しておいしいとは思えなかった‥‥
でも母は喜んで食べてくれました~。
あと私はカナダに住んでそろそろ10年。
今は日本食品も手軽に購入できるようになりました。
カレーはやっぱり王道!
日本にいるときはうちも豚肉を入れていましたが、
こちらではまずもって薄く切られたお肉を
手に入れることが難しいので、
だいたいお肉なしとか、牛肉のひき肉などを入れています。
うちの夫(カナディアン)は
カレーにたっぷりのチーズをのせて
食べるのがお気に入りです‥‥
すごいカロリーになりそう。
やっぱりカレーっていいですよ。

カナダで作る時も
バーモントカレーを使っているんでしょうか?
アメリカバーモント州のバーモントが名前の由来ですから、
日本で作るよりもカナダで作った方が距離が近くて
バーモント気分が出やすいかもしれませんね。
バーモントカレーにはりんごとはちみつのエキスが
すでに入ってるんです。
だから、改めてりんごとはちみつを
追加する必要はないんですよね。
かつて、イギリスがインドからインド料理文化を持ち帰り、
独自にカレーを作り始めたときには、
独特の甘みと酸味ををつけるために
細かくきざんだリンゴを鍋にいれて
一緒に煮こんでいたと聞いたことがあります。
そう考えれば、すりおろしりんごを加えて作ったカレーは、
イギリス式だったと言えなくもないですね!


069
ゆりりん/女性/39歳

一人暮らしをしている姉の家に遊びにいった時のこと。
「カレー食べる? ゴーヤ余っていたから入れちゃった~」
と言いながら姉が出してきたのは、
『ゴーヤ入りカレー』というよりは、
『ゴーヤのカレー煮』。
一口食べてみると‥‥カレーが、
あのすべてをカレー味に染め上げるカレーが、
ゴーヤの苦味に完敗しておりました‥‥。
ゴーヤが得意ではない私は完全にノックアウト。
一方ゴーヤ好きな姉は
「食べれないほどじゃないと思うけどな~」
と言いながらパクパク食べておりました。
味覚は人によって様々だと思い知りました。

ゴーヤのカレー、いいじゃないですか。
ゴーヤカレーというのは、インドにもありますよ。
しかも、インドでは、タネもワタも取り除かないんです。
ただ、ゴーヤをまるごとスライスするのみ。
このカレーが美味しいんですよね。
なんで苦くないんだろう。
すごく不思議です。
きっと煮込み過ぎないことはポイントの一つなんでしょう。
どこかのインド料理店で見かけたら食べてみてください。

070
こなゆき

母親のカレーは、角切りの肉(牛か豚)、
大振りに切った野菜、
父親の好みの一番辛いカレールゥでした。
味は美味しかったと記憶してますが、
ゴロゴロした具材が何となく
『ご飯と馴染まないなあ』と感じていた私は
夕食がカレーだとあらかじめ知らされた時には、
バゲットやプチフランスなどの
歯ごたえの強いパンを買って帰りました。
その後独り暮らしをするようになり、
ご飯と馴染む『自分好みのカレー』を
試行錯誤を重ねて作り、行き着いたのは
『具材の肉はひき肉、
 野菜は米粒に合わせて小さく切る、
 カレールゥは中辛か甘口』でした。
今は『キーマカレー』の知名度も上がり、
街中でもレトルトでも
美味しいキーマカレーが楽しめますが、
実家のカレーは『肉料理』に分類されていたので
角切り肉はカレーには当たり前でした。
私好みのひき肉のカレーは
『ビンボー臭い』とまで言われておりました。
実家では何事につけても
あまり楽しい思い出はありませんが、
現在は作るたびに義母や連れ合いや
その弟妹と姪や甥も
『ウマイウマイ』とお代わりまでしてくれるので
『これでよかったんだなあ』と感じています。

角切りの肉といえば、
ご馳走のイメージを強くさせるのに
最適な要素だと思いますが、
そんなカレーが子供心に
「ライスに合わない」
と思っていただなんて面白いですね。
挽き肉が貧乏くさい、というイメージは、
確かにあったと思います。
インド料理のキーマ(挽き肉)カレーが
知られるようになって、
挽き肉のイメージがよくなったのも確か。
ちなみに僕はキーマカレーを作る時は、
挽き肉を買うのではなく、
角切りの牛肉や豚肉を買ってきて、自分で切ります。
通常の挽肉よりも粗挽きになるように、
大きめに切るんです。
そうすると味わいと同時に食感が楽しめていいですよ。
オススメします。

いろんな思い出をありがとうございました。
2013-11-06-WED
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