水野
森内さんが将棋連盟の理事として
正式に仕事をされるのはいつからですか。
森内
承認を受けられれば、来週からですね。
水野
じゃあ、もうすぐですね。
それに伴って、森内さんとしての
「これから将棋界がこうなったらいい」
みたいな思いはありますか。
森内
やっぱりわたしとしては、もっと多くの方に
将棋のおもしろさを知っていただきたいんです。
せっかくこれだけ長く続いている伝統文化ですので、
もっと盛り上げて、たくさんの人に愛される
将棋界を作れたらと思っていて。
いまは藤井四段が盛り上げてくれていますけど、
まだまだ一時的なブームだと思うので、
ここからさらに広まるように
わたしも頑張れたらと思っています。
水野
なにか森内さんのほうから、
みなさんへのお知らせなどはありますか?
森内
お知らせについてはとくに考えてなかったんですが、
今日のこのトークイベントは、
個人的にもとても楽しみにしてたんですね。
ですから多くの方にお集まりいただけて、
本当に嬉しかったです。
理事に就任できるとしたら、
その前の最後のイベントですので、
楽しい1日になってよかったなと思いました。
水野
理事になったら森内さん、もう二度と
こんなイベントには出てくれないかも‥‥(笑)。
森内
(笑)まずは将棋連盟の仕事のほうで
頑張ろうと思います。
水野
ぼくも今日は、森内さんにいろいろ聞けて、
さらにカレーを食べていただけて、
とても嬉しかったです。
夢がひとつ叶いました。
森内
今回のイベントは水野さんの新しい本の
発売記念イベントだったはずですけど、
全然本の話をしなかったですね。
水野
そうですね(笑)。
今日のトークの内容に繋がるような
カレー文化の奥深い話が本の中に書いてあります。
今日参加していただいた方には
おみやげで本をお渡ししているので、
おうちに帰ってからじっくり読んでいただければ。
森内
あ‥‥水野さん、そういえば。
水野
はい。そういえば?
森内
水野さん、いま、
カレーのフードトラック
を
されているんですよね。
将棋会館、駐車場ありますよ。
水野
うわー。なるほど。
じゃ、何かのイベントのときなど、もし可能だったら。
森内
はい、一緒にできることがあれば、ぜひ。
水野
こちらこそ、よろしくお願いします。
‥‥と、まだまだ話し足りないくらいですが、
そうすると永遠に話し続けてしまうので、
今日はこのあたりで終わらせていただけたらと思います。
それでは、森内俊之九段でした。
どうもありがとうございました。
会場
(拍手)
森内
どうもありがとうございました。
(退出される森内さん。
そして最後に水野さんから、おまけの話がありました)
水野
来てくださったみなさん、
今日はありがとうございました。
対談はこれで終了ですが、今日の締めの話として、
最後にぼくから、さきほどのAIの話の続きを
すこしだけさせてもらえたらと思います。
さっきもすこし話に出た
「Ponanza」という、名人と2回戦って
2回とも名人に勝った、
いま将棋界で最強だと言われているAIがあるんですね。
実はこの「Ponanza(ポナンザ)」が、
このゴールデンウィークに、
ある別のソフトに負けたんです。
ご存知の人もいるかもしれない。
会場
「elmo(エルモ)」
水野
そう、「elmo」ってソフトに負けたんです。
おもしろいのが「Ponanza」というのは、
企業がすごくお金も投資して、
計算力もすごく高いものにして、優秀な人が集まって、
よってたかって開発しているソフトなんですね。
投資されたのは最近のようなんですけど。
で、この日本最強の「Ponanza」ですけれども、
開発の中身はブラックボックスらしいんです。
一方「elmo」は、開発者のかたが
自分のソフトを「全国の人が好きに使っていいですよ」
とオープンソースにしているものなんです。
だからみんながそれぞれに
トライ&エラーを繰り返すことができて、
そのみんなで蓄積した集合知を元に
ゴールデンウィークに「Ponanza」と戦って、
勝ったわけですね。
水野
ぼくが完全に正しい理解をできてるかどうか
わかりませんけれども、
このブラックボックスで開発した「Ponanza」に、
オープンソースでみんなの集合知を集めた「elmo」が
勝てた、ということが、
ぼくにはちょっとうれしいニュースだったんです。
というのが、
ここで急にカレーの話になりますけれども、
ぼくはいま
「カレーの世界におけるオープンソース化」に
すごく興味があるんですね。
カレー屋さんってふつうは「秘伝のレシピ」みたいに
自分の店のレシピを隠すのが一般的なんです。
基本のレシピというのは
各お店ごとのブラックボックスで、
できるだけわからないように作るんです。
だけど「elmo」の話みたいに、もしカレーの世界も
「レシピのオープンソース化」の流れがきたら、
みんなのトライ&エラーが増えて、
日本のカレーがいまよりもっとおいしくなったり、
プレーヤーも増えていったりして、
ますますおもしろくなるんじゃないか。
そんなことをいま、思っているんです。
水野
だから、まずは自分からだと思ってて、
ぼくはこれからカレーの世界で
自分のレシピを「オープンソース」する取り組みを
たくさんやってみたいと思っているんです。
さきほど森内さんに言っていただいた
フードトラックの
「カレーの車」
もそのひとつで、
そのうちここで出しているカレーのレシピを
公開していけたらと思っているんですけど。
こういうことは将棋の世界の
「Ponanza」と「elmo」の対局に
ちょっと背中を押してもらった気がしてて、
今日はカレーと将棋のトークイベントなので、
ぜひ最後にこの話をできたらと思っていたのでした。
‥‥というわけで、そんな思いで、
今日みなさんに食べてもらったカレーのレシピを、
「オープンソース」のひとつの試みとしてお配りします
(こちらのページでも公開しています)。
水野
ですから、もし興味を持ったかたがいたら、
ぜひ実際に作ってみて、こうしたらもっと良くなった、
などのアイデアがあれば、
「カレーの学校」などをおこなっている
「カレースター計画」のメールアドレス
宛に
フィードバックをください。
そしたらぼくはそれをもとにレシピを進化させ、
それをまたオープンにして、
よりおいしいレシピを作れたらと思いますので。
そして、森内さんが将棋連盟の理事として
将棋の世界をますます魅力的にしようとしているように、
ぼくのいるカレーの世界も
将棋のおもしろさに負けないよう、
もっと盛り上げていけたらといいなと思っています。
あの‥‥最後にといいながら、
ついついかなり長くなってしまいましたが(笑)、
今日のイベントはこれで終わりにしたいと思います。
今日は長時間にわたっておつきあいいただきまして、
本当にありがとうございました。
会場
(拍手)
(連載はこちらで終了です。
森内さん、水野さん、ありがとうございました)
2017-08-07-MON
© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN