糸井 | なにしろ大坊さんとは、 「あ、どうも」「こんにちは」の関係ですから、 きょうはどうなるかと思いましたが、 いやぁ、おもしろかったです。 |
大坊 | ありがとうございました。 |
糸井 | こちらこそです。 |
山下 | コーヒーを淹れていただいて。 |
福田 | 飲ませていただいて。 |
糸井 | 何回も聞かれていることだと思うんですが、 もうお店はやらないんですか? |
大坊 | それは‥‥(長く考える)‥‥。 糸井さんも原稿のなかで、 「またどこかで顔を出すことを待っている」 ということを書いてくださいました。 「またやる」ということは、 自分の中にすごくこう、あるのですけれども‥‥。 まず、同じことは実現しないだろうということが、 ひとつ、あります。 じゃあ、すこし形を変えるなり、 時間を変えるなり、 別な方法もあるかもしれませんけれども‥‥。 そうしてやることが、 今まで店を支えてくれた人たちを、 がっかりさせてしまうのではないか、 という危惧も、ないことはないのです。 |
糸井 | なるほど。 |
大坊 | それと、 もう一度ああいう緊張感の中でやっていくとして、 あと何年耐えられるだろうと考えます。 体力的にも。 簡単には決められないといいますか‥‥。 |
糸井 | はい。わかります。 |
大坊 | すみません。 「もう一回やります」と言えなくて。 |
糸井 | いや、そのとおりだろうなぁと思いますよ。 今、どのようにお暮しになってるのか ぼくは知りませんけれど、 現在が楽しければ、 お店を開かなくたっていいと思います。 物足りないとお思いでしたら、 物足りないものをまた探せばいいと思うんです。 そうですね‥‥ 大坊さんは、人にサービスすることを やめちゃって構わない気がします。 ここまでずっと約束を守ってきた人ですから。 もし、この先なにかを始めるなら、 次はものすごくゆるい約束でいいですよね。 2度目なんだから、 好きなようにおやりになる権利があるというか。 引退後に何をするか、みんなが考えてますけれど、 その意味では コーヒー屋の店長だった人が、 引退後にコーヒー淹れるのを趣味にして、 「たまに誰かに会うんですよ」 くらいのことで、すごくいいのかもしれませんね。 |
大坊 | まさしく今は、そういう感じなんです。 「これは趣味だな」と思いながらやっています。 趣味で、焙煎したりコーヒーを淹れたり。 あとは、 「うちのリビングでのコーヒータイムですが、 よかったらいかがですか?」と、 知り合いをお誘いすることもあります。 これも、趣味です。 |
糸井 | ああー、そうですか、それはいいですね。 |
大坊 | ですから、私がコーヒーを淹れることを 望んでくださるのであれば、 こちらにお邪魔して また今日のようなことを‥‥。 もしもやってもいいというお気持ちが あるのであればですが‥‥。 |
山下 | え‥‥ほんとうですか?! |
大坊 | あくまで、趣味の感じで。 |
山下 | そんな光栄なお話を‥‥。 ありがとうございます。 もちろん大歓迎です! |
糸井 | 「大坊珈琲店」が青山通りを横断して、 ほぼ日にやってきた(笑)。 |
福田 | いいですねー。 |
糸井 | ‥‥あ‥‥というよりも‥‥ もっといいことを思いついた。 |
山下 | なんでしょう? |
糸井 | 大坊さん、うち、もうすぐ、 お店を出すんですよ。 |
大坊 | お店? |
糸井 | そう。 いろいろなことをやっていくお店です。 たとえば、 作家さんの展覧会を兼ねてなにかやるとか、 ダウンジャケットの試着会とか、 その都度のことをやっていく実店舗です。 |
大坊 | はい。 |
糸井 | それが、あのね、いい場所にあるんですよ。 表参道をまっすぐ行って、 「根津美術館」にぶつかりますよね。 天ぷら屋さんのある交差点。 |
大坊 | ええ、わかります。 |
糸井 | あそこを左に曲がると橋がありますよね。 その橋のちょっと手前に クリーニング屋があったでしょ? |
大坊 | ありました。 右側に。 |
糸井 | そう、右側に。 あそこをぼくら、借りたんです。 どうでしょう、大坊さん、 もしもなにかやろうかなと思ったら、 そこでやりませんか? |
大坊 | ‥‥あの、 そこの場所はですね、 「こんな所で店をやりたい」って、 ずっと私が思っていた所です。 |
一同 | ええーー! |
糸井 | ほんとう?! |
山下 | ほんとですか?! |
大坊 | お店をやっているあいだに 何度か立ち退きの交渉がありまして、 そのたびに、代替え地を考えるんです。 いつも頭のなかで思うのが、その場所なんですよ。 「店を移すなら あのクリーニング屋のあたりがいいな」と。 |
糸井 | へええーーー。 ちょっと、うれしいかも(笑)。 |
大坊 | すこし町はずれで。 あそこの位置を、ずっと検討してました。 |
糸井 | ちょうどいい場所ですよね。 |
大坊 | ちょうどいいです。 |
糸井 | じゃあ、大坊さん、 そこでやってみませんか。 |
大坊 | 趣味の範囲でよろしければ。 |
糸井 | もちろんです。 ご自分の心の準備もあるでしょうから、 好きな時でいいんです。 ぼくらは何も要求するものはありません。 |
大坊 | そこで焙煎もしていいんですか? |
糸井 | 大丈夫でしょう、問題ないと思いますよ。 もうすぐ工事が終わりますから、 見に行ってみましょう。 |
大坊 | そうですね‥‥‥‥。 |
糸井 | できそうじゃないですか。どうやら。 |
大坊 | ただ、やはりお客様の前でコーヒーを作るのは、 やはりまた慣れませんので‥‥。 |
糸井 | もう、お好きなようにしてください。 |
大坊 | 隠れた場所で淹れるのであれば 大丈夫だと思うのですが。 |
糸井 | 隠れて淹れる場所をつくりますよ。 |
大坊 | そうですか。 |
山下 | この絵を飾りましょう。 お客さまは、コーヒーを淹れる大坊さんの 絵を見ながら、できあがりを待つとか。 |
糸井 | あぁ、それもうれしいんじゃないですか。 |
福田 | 役に立てればぼくもうれしいです。 |
糸井 | ですよね、 みんなよろこぶと思うんですよ。 具体的なお店のやり方とか、 お客さんをどうするかとか、 また話し合いましょう。 とにかく、大坊さんのやりやすいように。 ぼくらからは、何も制約ないですから。 |
大坊 | それは‥‥できるかもしれません。 |
糸井 | やりましょう、やりましょう。 |
大坊 | いいですね。 継続的にやれるかどうかは、 考えなくてはなりませんけども‥‥。 |
糸井 | はい。ほんとうにお好きなように。 しつこいようですが、制約はなにもないので。 |
山下 | なんだか、すごい展開に。 |
福田 | はい。 |
糸井 | あ、忘れてた‥‥ そういえば、制約がひとつだけありました。 |
山下 | ‥‥なんですか? |
糸井 | ぼくをかならずお客にしてください。 |
一同 | (笑) |
大坊 | わかりました、お待ちしています(笑)。 |
(対談は終了です。 最後までお読みくださり、ありがとうございました。 なんとなんと、「大坊珈琲店」が、 ほぼ日のお店で、復活するかもしれない?! すごい展開になりました。 詳しいことが決まりましたら、 なんらかのかたちでお知らせいたしますね。 それでは!) |