26周年のご挨拶
ちょっと腰を下ろして
小声で話しはじめる
26度目の創刊記念日。

気づいたんだけどね。
あ、わたしは糸井重里ですが。
こういうなにかの節目の記念日みたいなときに、
「イトイさん、挨拶をよろしくお願いします。
文字数は自由で大丈夫です。何日までにお願いします」
と依頼されるわけです。
ぼく自身も、そうだよな、書くよ書くつもりだよと
ずっと心に留めていた記念の日だから、
もちろん、ちゃんと考えて書くんですけどね。
このときの「書く人」って、
なんとなく「ほぼ日の代表」の糸井重里
というつもりでいたんです。
記念の日の挨拶となると、オートマチックに
「代表」の気持ちになっちゃってね。
それでよかったのかもしれないんだけど、
まてよ、そのほうがよかったのかなぁと、
今年についてはちょっと思ったんです。

もともと、ぼく個人の思いつきで
「ほぼ日刊イトイ新聞」が創刊されたのが
1998年の6月6日、ということでした。
この日がなければ、いまの「ほぼ日」はないので、
ぼくが「代表」という立場で挨拶をするというのは、
まったくまちがいじゃないのですが。
よく考えると、ある意味「わがまま」で、
ある意味「軽はずみ」な
創刊のときの個人的な気持ちが、
ほんとに大事だったんだなぁと、
いまになってつくづく思っているのです。
代表する者としての責任だとかは、
もちろんあるに決まってるけど、
それだけじゃおもしろくならないですよね。
「やさしく、つよく、おもしろく」のうちの
「おもしろく」のところが、
「代表」っていう立ち位置からは出しにくいんです。
ついつい、安心感だとか、誠実なチームの希望とか、
「やさしく、つよく」ばかりを伝えてしまうんです。
実際、それはそれで、大切なことなんですけど。

で、この26周年のこのページでは、
「ほぼ日の代表」ということだけでなく、
イトイ個人の気持ちを多めにしてみようと思いました。
ねぇ、もう25年という四半世紀さえ過ぎて、
26年つまり四半世紀+1年なんだから、
ある意味もっと野生的なプロジェクトを、
考えたり語ったり実行したりするような
1998年の創刊前みたいな風を吹かせましょう。
ほぼ日刊イトイ新聞は、どこに行くか不明の出発をして、
前例を知らないままに成長もして、
それなりの信頼を寄せてもらえるようになった。
そういう「ほぼ日」だからこその「おもしろく」を、
いろんな角度から再開発していきたいと思うのです。

よく、「よそもの、わかもの、ばかもの」が
元気な町をつくっていくと言いますが。
ぼくら自身が「よそもの、わかもの、ばかもの」として、
世界をワッショイワッショイともんでいきたい。
そう考えて、そういうことをこの日に言っておきます。

もう実は胎動ははじまっているんです。
これを読んでるみんなも、いっしょにやりましょう。

2024年6月6日
ほぼ日刊イトイ新聞をはじめた人として
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