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中村 |
子どもを保育園に預けるとき、
トイレット・トレーニングをしてから
連れてきてくださいと言われるんだけど、
1歳半の子を連れて行っても
そう言われることがあるんだよね。
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本田 |
それは、無理なんじゃない?
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中村 |
うん、無理。
できましたー、って連れていったりもするんだけど、
昼間でもおしっこを決まったときに
決まった場所でするのは
3歳ぐらいにならないと、むずかしいと思う。
それが夜におしっこを溜めて、朝までもたせるとなると、
もっと後、4、5歳ぐらいにならないとできないね。
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本田 |
4、5歳ぐらいね。
そうすると、
子どもがおねしょをして困ってしまったり、
心配になってくるのは、その年頃を過ぎたぐらいから?
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中村 |
いや、4、5歳で
おねしょの回数が多かったとしても、
ご両親がそういうものだと思っていれば
心配なものとしては捉えないね。
わたしたちも、小学校にあがる前までは
自然におねしょがなくなっていく過程だと考えるよ。
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本田 |
そう。じゃあ、
おねしょとどうやってつきあうかを考えると、
小学校にあがる前のおねしょは、
からだの機能の発達が、早いか
すこしゆっくりしているかの違いで、
自然に治ると思って、
見守っていていいということ?
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中村 |
そのとおり。
その時期のおねしょは
自然に治るものがほとんどだから、
あせらずに見守ることが大切だと思う。
ところで、今ひとまとめに話しているけど、
おねしょって、厳密にいうと、
「一次性のおねしょ」と「二次性のおねしょ」に
分けて考えるんです。
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本田 |
なるほど。それは?
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中村 |
まず、一次性というのは、赤ちゃんのときから
途切れることなしにずっとつづいているおねしょです。
赤ちゃんは、おむつのなかでおしっこしてるわけだけど、
それがその後もおむつがなかなか取れないとか、
おむつを取って、うまくいったり失敗したりしてるとか、
そういうのがずっと長くつづいている状態を
一次性のおねしょと言います。
この一次性のおねしょが
おねしょの大部分を占めているんですが、
二次性というのは、
いったん、しなくなっていたおねしょが
途中からまた起こってくるもの。
目安としては、1年くらいおねしょをしない期間があって、
もういちど起こってくるおねしょを
二次性のおねしょと呼んでるんです。
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本田 |
一次性と二次性で、原因も違うんでしょうね。
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中村 |
そう。まず、一次性のおねしょの場合で言うと、
たとえば、水分や塩分を多くとり過ぎていたら、
どうしてもおしっこが多くなるから
おねしょが長くつづくわけです。
それから、さっき話した
抗利尿ホルモンによる調節や、膀胱の発達が未熟だと
おしっこをためることがなかなかできないから
おねしょが長くつづく。
その抗利尿ホルモンが少ない、
または、たくさん出ているけど効きがわるいときには
おしっこを濃縮できないから、おねしょが長くつづいて、
この場合、同時に、「尿崩症」(にょうほうしょう)という
病気の可能性を考えてみる必要もあります。
つまり、一次性のおねしょの場合は、
生活習慣か、発達か、あるいは生まれつきの病気が
原因ではないかと考えるんです。
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本田 |
なるほど。
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中村 |
それから、二次性の場合は、
おねしょをしなくなってしばらくしてから
また始まるおねしょだから
途中でなにかが起こっている。
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本田 |
ええ、ええ。
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中村 |
ひとつは、心理的な影響によるもの。
たとえば、妹、弟が生まれた、
幼稚園、保育園に行きはじめたといった
こころや周囲の変化が原因になっていることが
多いと言われてますね。
それから、
たとえば感染症や尿崩症、糖尿病といった
病気の症状のひとつとして、
二次性のおねしょが起こることがあるんです。
だから、とくに二次性のおねしょの場合は、
病気が原因になっていないかを、
まず確認することが、大切なんです。
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本田 |
中村くんが相談にのってくれたようこちゃんの場合も、
子どもの様子を聞いて、
一次性か二次性かを鑑別しながら聞いてくれたのね。
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中村 |
そうだね。まず、
ずっとつづいているおねしょかどうか。
これは、ずっとつづいているおねしょだった。
それから、
昼間もおしっこが漏れるかどうか。
これも大事で、夜中のおねしょだけなら、
尿の量を夜間に調節する働きが、
まだきちんと成熟していないということが考えられる。
逆に、もし昼のあいだにも
突然おしっこがもれるようだったら、
自然に治るおねしょではないかもしれない。
膀胱の働きとか、おしっこを調節する働きに、
なにか異常がないかを考えるね。
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本田 |
解剖学的に、
なにか問題があるかもしれないということね。
で、ようこちゃんの子はそうではなさそうだ、と。
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中村 |
そう。そうではなかった。
つぎは、おねしょをするのは
毎日なのか、ときどきなのか。
それから、ひと晩にするおねしょの回数。
おねしょの頻度は、本人や親ごさんが
どれぐらい負担に感じているかということと、
からだの機能が、
成熟していく過程のどこにあるのかを考える
目安になるからね。
そして、
夜中の何時ぐらいにおねしょをするか
ということも、いい目安になるんだよ。
夜の早い時間におねしょしている場合は、
夜のおしっこの量をうまく減らせていないか
膀胱がまだ小さいか、
または、その両方が考えられる。
いずれにしろ、おねしょが消えるまでに
もうしばらく時間がかかるんだけど、
朝方におねしょをする子は、
もう、おねしょが消える直前なんだ。
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本田 |
そうなの!
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中村 |
そう。夜のおしっこを朝方まで
膀胱にためておけるということだから、
あともう一歩のところまできているわけ。
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本田 |
おねしょが朝方だということがわかれば、
おねしょの夜明けは近いということで、
もうちょっとだって、思っていいのね。
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(つづきます) |