日野原重明先生に聞いた 健康についての大切な話。

本田 おねしょは心配する親はもちろん、
本人にとってもつらいものだしね。
中村 そうだね。
覚えてる? 自分がおねしょしたこと。
本田 ううん、わたしは覚えてない。
中村くんは?
中村 1回だけだけど、覚えてるよ。
本田 いくつぐらいのこと?
中村 たしか、小学校にあがった年の冬だったと思う。
夜中に目が覚めて、すごく寒くてね、
別の部屋で寝てた妹弟たちのところに行って、
妹の布団にもぐり込んで寝たんだよ。
で、朝起きたら、おねしょしてたの。
本田 うん。
中村 そのときかどうかはっきりしないんだけど、
たしか、トイレに行く夢を見たんだ。
で、おしっこする夢を見て‥‥
本田 あぁ、気持ちよく。
中村 途中で、ハッ、これは夢じゃなかろうか、
と気がついて‥‥そうしたら、おねしょしてたの。
それで、そーっと布団を抜け出して
自分の部屋に戻って、また寝た。

朝、妹が怒ってるわけ。
「わたしじゃない!」って。
本田 (笑)
中村 「お兄ちゃんが横に寝てたの覚えてる!」って
妹が言ってるんだけど、
わたしも「ぼくががやりました」とは言わないで
だまーってたら、
親が、「まあ、いいからいいから」みたいな感じで
後始末してくれたんだ。
これ、まだ妹にあやまってないけど(笑)。
本田 あのときじつは‥‥って(笑)?
中村 でも、そういう親の対応っていうのも
すごく大事だなぁと思うんだよ。
なぜうちの親がそうやって対応をしてくれたのか
わからないんだけど、怒られなかったんだよね。
本田 子どもがおねしょをしたときに、
叱らないほうがいいということね?
中村 うん。怒っても、どうなるものでもないんだよ。
本田 本人の意思でなんとかできるものじゃないから
しつけの問題でもないし。
中村 そう。でもね、そうは言っても、
親もストレスに感じるものだとは思うんだよ。
おねしょがたまのことだったら、
ああ、いいよいいよって、洗濯するじゃない。
でも、それが毎日だったら
やっぱり負担になるからね。

だから、おねしょのときには、
親がいかにストレスを感じないで
おねしょの状態をつづけるかというのも
大事だと思う。
本田 おねしょと、どうつきあうか。
中村 うん。子どもがおねしょしたら、
洗濯しないといけないとか、
子どもにプレッシャーを与えてはいけないと考えることが
逆に親の負担になってしまったりもするからね。
それが1回だけのことだったら、
「まあ、そういうこともあるよね」で
済ませられると思うけど、毎日だったら
すごくたいへんだと思うからね。
本田 ええ。
中村 小さいときなら、
夜おむつをはめて寝てもらうというので対応できるけど、
もっと大きくなって、下に妹や弟がいると、
おにいちゃんやおねえちゃんがおむつして寝るというのも
やっぱり本人は抵抗あるよ。
それを、年下の弟妹にわからないようにするとかね。

毎晩のおねしょなら、本人もたいへんなんだよ。
おむつしてたほうがあとが楽だからと言って、
自分からおむつして寝る子もいるね。

おねしょそのものも、治るのに時間がかかるんだけど、
それまでのあいだ、その子とご両親とが、
いかにその時期を負担なく過ごしていくかというのも
すごく大事なんだ。
ほぼ日 じつはわたし、おねしょが長かったんです。
中村 えっ、そうですか。
ほぼ日 姉もわたしも、たしか小学校3年生か4年ぐらいまで
おねしょがあって。
わたしのときは、お姉ちゃんもそのぐらいで終わったから
だいじょうぶ、終わるわよ、って親に言われてました。
中村 なるほど、なるほど。
ほぼ日 ほんとにいまお聞きした話の通りだったんです。
ずっとつづいているおねしょで、
昼間はおもらしはしないんですけど、
夜はおねしょをしていて。
うちの姉妹に共通していたのが
眠りが深くて、赤ん坊のときも
とにかく夜泣きをしない子だったらしいです。
本田 熟睡タイプね。
ほぼ日 はい、それがふたりの特徴だったらしいです。
親は、嫌な顔はしなかったんですが、
母はやっぱり洗濯がたいへんだったんで、
いろいろとグッズを用意してました。
中村 たとえば?
ほぼ日 いちばん覚えているのは、ビニールの風呂敷ですね。
ベットマットを濡らすとたいへんなので
「おしっこマット」と呼ばれているシートを
ベッドマットの上に敷いてたんですが、
そのおしっこマットとベッドマットのあいだに
さらにビニールの風呂敷を挟んでたのを覚えてます。
中村 うんうん。
ほぼ日 あと、お灸をやってました。
中村 なるほど。
本田 お灸は効きました?
ほぼ日 いえ、それが効かなかったんです。
お灸も母が自分でやるもんだから、
ときどき間違ってさかさまにしてしまって
あちっ! なんてこともあって(笑)。
でも、どちらかといえば母も楽しみながら
仕入れてきたお灸の術をやったりして、
わりあい親子で一体となって
おねしょとつきあってた感じだったなぁと思います。
中村 前向きに解決していったんですね。

そういえば、おねしょってね、
遺伝も関係あるんじゃないかと言われてるんですよ。
本田 そうなの?
中村 遺伝といっても、
「この遺伝子の異常があるからおねしょになる」
ということではないんですが、
両親のどちらかがおねしょをしていたら
子どももおねしょが長くつづくことがあると
言われてるんです。

そして、おねしょの子の5割ぐらいは、
家族のほかの誰かもおねしょしていると
言われてますね。
ほぼ日 そうなんですか。
うちは、両親が独自につくった説があって、
父は目が覚めやすいんですけど、
夜中に3回くらいトイレに行くんですね。
その父親の頻尿に、母親の熟睡体質が重なって、
夜中に起きれないうえに頻尿で
おねしょするんじゃないかって言われてたんです。
でも、いまのお話を聞くと、
親がふたりともおねしょしていたのかも(笑)。
中村 眠りの深さとおねしょの関係を
調べた人たちもいますよ。
すると、おねしょをする子は
たしかに目が覚めにくいらしいです。
一方で、眠りの深さとか眠りのタイプ、
レム睡眠、ノンレム睡眠とかいったものと
おねしょをする時間とは関係ないんじゃないかと
言われてますね。
ほぼ日 へえー、そうなんですね。
でもわたし、いま考えると、
おねしょはずいぶん長かったですね。
朝起きて、濡れてるのがわかると、
すっごく落ち込むんですよ。
なんといっても気持ちが悪いので、
やっぱりあれはないほうが‥‥
中村 うん、あるよりはないほうがいいよね。
小学校に入った時点で
1週間に1回かそれ以上のおねしょがある子は、
1年生全体の、1割から多く見積もって2割くらいと
いわれています。
それから毎年、そのうちの1割ずつくらいの子どもが、
おねしょが治っていくと言われてるんですよ。
ほぼ日 わたしの場合も、1年生のときより、2年生、
2年生より3年生って、学年があがるほど、
おねしょの頻度がどんどんさがっていってました。
覚えているぐらいの年頃には、
やっぱり明け方におねしょしていたような気がするし。
たしか、うちの親もそんなこと言ってたなぁ、って、
いまのお話をうかがいながら思ってたんです。

わたしの場合は、姉がそうだったこともあってか
だいじょうぶ、自然に治るんだよ、って言われて
自分でもそう思ってましたけど、
それがわかっているのと、わかっていないのでは、
気持ちがまったく違うだろうな、と思いますね。

(つづきます)

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2009-12-07-MON