「ほぼ日の健康手帳」が ニンテンドーDSi用のソフトになりました。  自分の健康について 考える道具。 岩田聡(任天堂社長)×本田美和子(医師)×糸井重里

糸井 やっぱり、健康についての知識が
どれだけあっても、知識だけじゃダメで、
自分自身についてほんとうに
真剣に考えないといけない。
それができるようになるためには、
やっぱり何かが必要なんですよ。
本田 「何か」。
糸井 その「何か」がなんなのか、
ぼくもしばらくわからなかったんですけど、
それは、「他人との関係」なんじゃないかと、
最近になって思ってるんです。
そのきっかけになったのは、
北折一さんという「ためしてガッテン」の
番組ディレクターが書いた
『死なないぞダイエット』という
その名の通り、ダイエットの本なんです。
岩田 ああ、
糸井さんにすすめられて私も読みました。
糸井 あ、読みましたか。
あの本の第1章に
「あなたが突然亡くなったときに、
 どういうことが起こるかを想像しなさい」
というようなことが書いてあるんです。
本田 へぇー。
岩田 それを、とても具体的に書いてあるんですよ。
本田 そうなんですか。
糸井 ダイエットの本だけど、第1章には、
「あなたが突然死んだらどうなるでしょう」
ということしか書いてないんです。
つまり、ダイエットの動機の部分ですよね。
それはもう、見事に説得力があるんです。
あの、いまって、痛い思いをしながら
長々と病院で過ごすのはイヤだと、
だれもが思ってるじゃないですか。
だから、ぽっくり死ぬということが、
あたかも理想のように語られている。
でも、「突然死ぬ」ということが
いかに恐ろしいかということが、
この本のはじまりには書いてあるんです。
岩田 それも、できるだけ恐ろしく感じるような表現で
おもいっきり生々しく書いてあるんですよ。
そのことを認識することで、
真剣に自分の状態と向きあってみましょう、と。
そういうふうにして、
「動機」をつくる構成になっているんです。
糸井 そうそう。
「さぁ、考えてみてください」って。
本田 ああ、すばらしいですね。
糸井 あなたが突然死んだときに、
どういうことになるか。
自分がまもなく死ぬとわかったとしたら、
あなたはそれまでに何をすべきか。
優先順位は考えなくていいから、
すべて書き出してごらんなさい、って言うんだけど、
いやぁ、それはもう、
書き出すのが恐ろしいぐらい、
ものすごく、想像がつくんです。
本田 あぁ‥‥。
糸井 そうするとね、
えっ、これ、オレがいないところで、
誰かがやらなきゃいけなくなるのか、
と思ったら、もう、ぞっとするわけです。
わかりやすいところでは、
自分が一家の大黒柱だったら、
まず、生活の糧がどうなるか。
本田 大問題ですね。
糸井 大問題なんですよ。
金銭的に問題なくても
やりかけた仕事はあるだろうし、
愛情の行方、みたいな問題だってあるだろうし、
隠しごとだってあるかもしれないし(笑)。
本田 そうですよね(笑)。
残されたご家族は、悲しいだけじゃなくて、
役所で手続きなんかもしないといけないし。
糸井 とんでもないですよねぇ。
って考えると、やっぱり、
突然死んじゃうっていうのは、怖い。
ぜひ、避けたい。
岩田 ええ。
本田 はい。
糸井 ぼくは、それを認識したときにね、
ダイエットだけじゃなくて
健康全体に対する考え方をあらためる、
そういう承認印を押したような
気持ちになったんです。
本田 そうですか。
糸井 これまでも、
まったく考えてないわけじゃないんですよ。
小さいながらも会社の代表をやってますから、
そのことでタバコをやめたりはしてるんです。
だけど、いまになって、
あちこちでちょっといい加減にしてることが
こうなるんだっていうのが、
はっきりと見えちゃったんですね。
そうしたら、「健康手帳」のことも、
もうひとつ深く、理解できた気がするんです。
岩田 わかります。
糸井 いまぼくは、この本のダイエットを
続けているんですけど、
ダイエットというのもね、
たんに美容だけの話じゃなくて、
内臓疾患、生活習慣病の問題ですから。
本田 そうですね、はい。
糸井 ぼくのきっかけはこの本だけど、
そういう「きっかけ」になるようなことを
いろんな方法でどんどんつくっていこうと思って。
いま、実際に社内で進行している、
「虫歯のない会社宣言」っていうのも、
なにかひとつでもケアしているってことを
実感したかったからなんです。
本田 社員のみなさんの虫歯をゼロにしよう
という取り組みですね。
糸井 ええ。で、会社がうしろにいて、
怒ったり、すかしたりしながら、
君たちの虫歯を全部なくすぞ、って。
岩田 で、会社の中で、
最後に虫歯を残してる人がいると、
「君ひとりのために、
 みんなが虫歯じゃないってことが
 達成できないじゃないか」と。
本田 (笑)
糸井 そうそうそうそう。
ゲーム化してるわけなんですけどね、
岩田 はい、わかります。
糸井 健康診断や人間ドックなんかも
もちろんずっとやってるわけですけど、
どうしてこれを毎年
やっているのかということを、
理解することが大事だなと思いますね。
まぁ、それというのも、ある意味でいえば、
「自分を大切にしてほしい」という
本田さんの意志が回りまわって。
岩田 そうですね。
本田 だとしたら、うれしいです(笑)。


(つづきます)

2010-04-21-WED