ほぼ日のアースボール、
こんどはアプリで「月」に大変身!
月の表も裏もまるっと見られて、
アポロ船の着陸ポイントも
写真付きでたのしめる新コンテンツです。
監修は天文学者の渡部潤一先生。
そもそも月ってどうやってできたの?
なんで月には表と裏があるの?
太陽系って最後どうなっちゃうの?
月のきほんから宇宙のふしぎまで、
いろいろ先生に教えていただきます。
聞き手は「ほぼ日」稲崎です。
渡部潤一さんプロフィール
──
最近の月の研究では、
どんなことが注目されているんですか?
渡部
ひとつは、月に氷があるかどうか。
──
氷があるんですか?
渡部
月の南極と北極には一年中、
太陽が射さない部分があって、
そこにあるんじゃないかといわれています。
調査はすでにはじまっていますが、
まだはっきりはわかっていません。
──
もし氷が見つかったら、
人類にとってはすごいニュースですよね。
渡部
氷があれば水にできますし、
いろんなことに使えます。
電気分解すれば酸素も得られるし、
水素は燃料としても使える。
建築物やコンクリートをつくるときも、
水があるかないかは大変重要です。
──
ということは、近い将来、
人類が月に住むなんてことも‥‥。
渡部
50年、100年で、
そういうことになると思いますよ。
アメリカがいま進めている
「アルテミス計画」というのは、
人類が月に行くだけじゃなく、
月面で長期滞在するための
環境やシステムを整えようという
計画も含まれていますから。
そもそも月というのは、
さらにその先の宇宙へ行くための
非常にいい中継地点になんです。
宇宙のサービスエリアというか。
──
宇宙のサービスエリア!
渡部
例えばアメリカは火星に
人類を送ろうと考えていますが、
火星に行く前に月を中継できれば、
かなりリスクが減らせます。
これは「ゲートウェイ計画」というもので、
月を宇宙の「ゲートウェイ(玄関)」にして、
火星探査、あるいはそれより先の
深宇宙探査に行こうというものです。
──
もはや月に行くことは、
火星へのステップにすぎないと‥‥。
渡部
月には重力がありますし、
わざわざトンネルを掘らなくても、
自然にできた溶岩トンネルがあります。
その地下空間に入り込めば、
宇宙空間の放射線を防ぎつつ、
月面の温度変化も防げるかもしれません。
──
先生は、月と火星、
どっちが住みやすいと思いますか?
渡部
地球に似ているという点では、
圧倒的に火星のほうが住みやすいでしょうね。
もちろん宇宙服は着たままですが、
一応大気はあって重力は地球の3分の1。
自転周期も24時間とちょっとなので、
そのへんも地球とよく似ています。
ただ、残念ながら火星に行くには、
最短でも3~4カ月かかってしまいます。
──
月に比べると、
とんでもなく遠いわけですね。
渡部
さらに一度火星に行ったら、
いまは帰ってくる手段がありません。
つまり、いまは片道切符です。
──
帰ってこれない?!
渡部
火星の重力は地球の3分の1で、
かつ大気も存在します。
帰還するには相当なエネルギーを使って、
地球に向けたロケットを打たなきゃいけない。
技術的にも資金面においても、
いまの時点では現実的ではありません。
──
一生、火星暮らし‥‥。
渡部
ヨーロッパのある民間組織では、
片道切符という条件のもと、
火星への移住希望者を募集しているそうです。
──
えぇっ!
渡部
しかも、かなりの数の希望者が
すでに集まっているとも聞きます。
倫理的に許されるかどうかは別の話ですが、
そういう計画もあるにはあります。
──
そういえば最初のほうで、
「地球と月は毎年遠ざかっている」と
おっしゃっていましたよね。
渡部
毎年平均3~4センチ、
離れていってます。
──
ということは、
そのうち月はいなくなるんですか?
渡部
そもそも月というのは、
地球の自転エネルギーを
吸いとってるような存在なんですね。
いま地球は1日24時間ですが、
昔は1日4時間くらいでまわっていました。
つまり昼が2時間、夜が2時間。
──
マイクラみたいですね。
渡部
それがすこしずつ遅くなっていき、
いまは1回自転するのに24時間かかっています。
──
最終的にはどうなるんですか?
渡部
そのうち地球の自転スピードと
月の公転周期が同じになるときがきます。
200億年ぐらいあと、
月の公転周期がいまの28日くらいから
47日くらいになるといわれていて、
地球の自転もそれと同じになるので、
1日が47日になります。
──
1日が47日になる。
ちょっと意味がわかりません。
渡部
自転と公転がいっしょになると、
それ以上衛星が離れることはなくなり、
お互いの距離はロックされます。
これを潮汐(ちょうせき)ロックといいます。
──
それ以上、月は離れていかない?
渡部
そういうことですね。
ま、実際はそれが起こる前に
太陽が死んじゃうんだけどね。
──
太陽が死んじゃう!
渡部
太陽の寿命は100億年程度で、
この太陽系が生まれて、
すでに46億年くらい経過しています。
すくなくとも50億年後は、
太陽系はいまのかたちじゃないでしょうね。
──
野暮な質問かもしれませんが、
もし仮に50億年後まで
人間が地球上にいられたとしたら、
太陽の終焉というのは、
地球からどんなふうに見えるんでしょうか。
渡部
太陽は死ぬ前にふくれはじめます。
──
おっきくなる?
渡部
はい、おっきくなります。
そうすると地球はいまより熱くなりますから、
地球の大気はぜんぶ飛ばされて、
海もなくなって月のようになります。
──
お、おぉぉ‥‥。
渡部
太陽はふくれはじめると同時に、
表面からガスを飛ばすので、
太陽の重力は弱くなっていきます。
その影響で地球の軌道はすこしずつ広がり、
太陽からどんどん遠ざかっていきます。
それを追いかけるように太陽が大きくなり、
どこかで地球を飲み込むかもしれない。
──
太陽が地球のところまで来る?!
渡部
来るでしょうね。
太陽の直径って140万キロありますけど、
そういう星が5億キロぐらいまで
ふくらむこともあります。
地球と太陽の距離は1億4960万キロなので、
その可能性は十分にありえます。
──
ということは、地球の最後は
太陽に飲み込まれてしまって終わり‥‥。
渡部
いや、それはまだわかりません。
先ほどもいいましたが、
太陽は大きくなると同時に
重力も弱くなっていくので、
太陽系の軌道はどんどん広がっていきます。
地球という天体が外に逃げ切れるか、
大きくなる太陽に飲み込まれてしまうか‥‥。
──
まさに神のみぞ知る。
渡部
まあ、たとえうまく逃げられたとしても、
そこに生命はいないんですけどね。
▲2012年8月31日、NASAによって撮影された太陽の写真。
左下に大型の太陽フレアが見える。
(写真提供:
NASA on The Commons
)
(つづきます)
2021-09-19-SUN
ほぼ日のアースボール
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