地球と月と、宇宙のふしぎ。
ほぼ日のアースボール、
こんどはアプリで「月」に大変身! 
月の表も裏もまるっと見られて、
アポロ船の着陸ポイントも
写真付きでたのしめる新コンテンツです。
監修は天文学者の渡部潤一先生。

そもそも月ってどうやってできたの? 
なんで月には表と裏があるの? 
太陽系って最後どうなっちゃうの? 
月のきほんから宇宙のふしぎまで、
いろいろ先生に教えていただきます。

聞き手は「ほぼ日」稲崎です。
03 なぜ月に表と裏があるのか?
──
月っていつも同じ面を
地球に向けているんですよね。
渡部
はい。
──
そのことはよく知られていますが、
月の表と裏がぜんぜん違うというのは、
あまり知られていないと思うんです。



例えば、表にはウサギの模様になる
黒い部分がたくさんありますが、
裏にはほとんどありません。
写真
▲月の表と裏、アースボールだとこう見えます。
渡部
表の黒く見える部分は、
玄武岩というドロドロの溶岩が
吹き出して固まったものです。
昔から黒い平坦なところを
「海」と呼んでいますが、
ほんとうは「溶岩の海」なんです。
──
地球も他の惑星も、
表や裏にそこまで違いがありませんが、
なぜ月にはあるんでしょうか?
渡部
それについては
じつはまだ正確にわかっていません。
事実としてわかっていることは、
月の表は地殻が薄く、裏は厚いということ。
──
地殻の厚さが違う?
渡部
その差でなにが変わるかというと、
小さな天体が月に衝突したとき、
表側は薄い地殻を貫通して、
内部のマグマを噴出させます。
一方、裏側は地殻が厚いので
天体が内部まで貫通せずに
クレーターの跡をつくるにとどまります。
──
つまり裏側の地殻が厚かったため、
マグマが流れ出ることがなかった、と。
それで黒い部分が少ない。
渡部
まだはっきりとはわかっていませんけどね。
写真
▲地上から撮影された月。黒い部分は「海」と呼ばれている。
──
裏の地殻が厚くなったのは、
たまたまだったんでしょうか?
渡部
月の成り立ちから考えると、
そうなる運命だったともいえます。
地球という非常に強い重力の近くで
月は生まれたものですから、
どうしたって地球からの影響は避けられません。
なので月が形成されていくとき、
どうしても重いものは
重力が強い方に寄っていくわけです。
ドレッシングなんかでも、
重いものと軽いものは分離しますよね。
──
あー、なるほど。
渡部
月の地球側に重いものが
ちょっとずれて固まったというのは
たまたまというより、
必然的にそうなる運命だったといっても
いいかもしれませんね。
──
月にクレーターができる原因は、
小さな天体との衝突でしたよね。
渡部
そうです。
──
ひとつ疑問に思ったのは、
月の裏にクレーターがあるのは
なんとなくわかるのですが、
なんで表にもクレーターが
あんなにいっぱいあるんだろうって‥‥。
渡部
表側にあるのはヘンですか?
──
月の表はずっと地球を向いて
まわっているわけですから、
月にあたる前に地球にあたるんじゃないかと‥‥。
渡部
つまり、その質問は
「なぜ小惑星たちが地球をすり抜けて、
月の表側にたくさん衝突するのか」
ということですか?
──
そうです、そうです。
渡部
すこし勘違いされてるようですが、
じつは地球も月も、
宇宙空間ではすごく小さな天体です。
ものすごく小さいうえに、
地球と月のあいだには、
ほんとうはものすごい距離があります。
実際の宇宙のスケールで考えると、
別に地球をすり抜けなくても、
広大な宇宙に浮かんでいる月には
隕石が四方八方から飛んで来るんです。
──
うーん、なるほど‥‥。
渡部
テレビや図鑑でよく見かける
太陽系のイラストやアニメーションは、
どうしても原理の説明をするため、
地球や月や他の惑星を大きく描いていますが、
ほんとは絵に描けないぐらい小さいし、
お互いものすごく離れています。
──
太陽系をそのままのスケールで
縮小できればいいんですけどね‥‥。
渡部
それ、国立天文台の
三鷹キャンバスの中にありますよ(笑)。
──
あるんですか!
渡部
太陽系を140億分の1に縮めて、
惑星間の距離を歩いて体感できるんです。
じつは天文台のある三鷹市でも
同じようなイベントをやっています。
直径1メートルくらいの
巨大ボールを太陽に見立てて、
そこから各惑星までの距離を
歩いて体感しようというものです。
──
太陽を1メートルにした場合、
地球の大きさはどのくらいなんですか?
渡部
1センチくらいですね。
──
ちっちゃ!
渡部
地球の大きさは、
太陽の108分の1ですから。
──
そのスケールで計算すると、
地球までの距離というのは‥‥。
渡部
地球までの距離? 
それは、えっと‥‥ちょっと待って。
いま計算してみる。
──
急にすみません(笑)。
渡部
地球までが1億4960万キロで‥‥
その縮尺が13億分の1だとすると‥‥。
写真
──
宇宙の神が考えごとを‥‥。
渡部
ん、なに?
──
あ、いや、なんでもないです!
すみません、むちゃ振りで。
渡部
いやいや、ちょっとまってね。
写真
──
‥‥‥‥。
渡部
ここがこうで‥‥こうで‥‥はい。
たぶんあってると思うけど。
──
出ましたか?
渡部
出ました、115メートルです。
──
115メートル。
渡部
地球を1センチにした場合、
太陽までの距離はだいたい115メートル。
そうやって考えると、
やっぱ地球はけっこう近いですね。
──
それは近いんですか? 
正直、あまりイメージできてませんが‥‥。
渡部
太陽系の中でも、
地球はかなり太陽に近いほうです。
だって、同じスケールで計算すると、
海王星は太陽から3.5キロ離れています。
──
3.5キロ! 
はぁぁ、海王星ってそんなに遠いのか‥‥。
写真
▲1990年4月2日、ボイジャー2号によって撮影された海王星の写真。
(写真提供:NASA on The Commons
(つづきます)
2021-09-18-SAT
ほぼ日のアースボール 

新コンテンツ「月」登場! 
写真
ほぼ日のアースボール、
こんどは「月」になります! 
月の表も裏もばっちりのぞけて、
アポロの着陸ポイントもわかって、
月の地名や地形なんかも調べられます。

2021年9月16日(木)より配信開始。

アースボールの専用アプリを
最新バージョンにするとお使いいただけます。
秋のお月見のおともに、ぜひ!