先生:
田中明彦さん
生徒:
正則学園高等学校のみなさん
──
近所のスーパーもレジ袋を有料化して、
プラスチックを減らそうとしているんですが、
雨の日に行くと、傘を入れるビニール袋は
入口でどんどん配っていたりするんです。
田中
あぁ、はいはい。
──
そういう光景を見ると、
じぶんのやってるマイバッグが、
ちょっと虚しくなるときがあるんです。
そういうモヤモヤを抱えている人って、
けっこういるように思うのですが‥‥。
田中
これも、正解というものは、
あんまりないような感じがしますね。
世の中、どんな組織でも、
すべて完璧にロジカルに考えて
動いているわけじゃありませんから。
なぜその店で矛盾が起きるかというと、
レジ担当者はレジ袋を減らしたいけど、
別の担当者は濡れた傘を
店のなかに入れたくないからですよね。
つまり、どちらの担当者にも、
それぞれの理由があるわけです。
ただ、お客さんの側からすると、
そんなのは関係がないことなので、
単純に「矛盾してるなぁ」って思ってしまう。
──
そうです、そうです。
田中
こういう話に答えはありませんが、
ひとついえることは、
そういう矛盾に気づく人がふえれば、
それが改善されるチャンスも
またふえるってことだと思うんです。
たとえば、雨の日に店長が
「なんか矛盾してるぞ」って気づいたら、
何か別のやり方を考えるかもしれない。
または、店の人じゃなくても、
その矛盾を解決するイノベーションを
お客さんが考え出すかもしれない。
──
みんなが「ヘンだぞ」ってなれば、
そういう意見もいいやすくなりますよね。
田中
きょう、何度かいいましたが、
わたしはSDGsというのは、
社会のいまを測るための
チェックリストだと思っています。
SDGsに照らして考えてみると、
どこに矛盾があって、
どこに問題がかくれているか、
そういうものが見えてくるんです。
それにチェックリストですから、
どんな単位でも使うことができます。
国のような大きな単位から、
町や区や、お店、学校でも使えます。
ターゲットもぜんぶで169ありますから、
いろんなテーマで使えると思うんです。
まあ、こういうと元も子もないのですが、
何か人のためにいいことをすれば、
だいたいSDGsのどれかに当てはまる(笑)。
一同
(笑)
田中
いま、こうやって日本のなかに
SDGsがすこしずつ広がっているのは、
そういうわかりやすさが
あるからじゃないかなって思っています。
‥‥ええと、他に質問はありますか?
──
まだまだ聞きたいところですが、
じつはそろそろ時間のほうが‥‥。
田中
ああ、もう時間ですね。
それでは終わりにしましょうか。
きょうはみなさん、
SDGsがどういうものか、
すこしはわかってもらえましたか?
一同
(全員、うなずく)
田中
うんうん、それはよかった。
──
最後に田中先生のほうから、
きょうの授業の締めを、
ひとこといただけますでしょうか。
田中
わかりました。
きょうはSDGsの話をたくさんしましたが、
人間はみんな個性のある存在なので、
ひとりひとりがじぶんの生き方を決めるべきで、
何も社会問題のことばかり、
ずっと考えないといけないことはありません。
わたしのような立場だと、
しょっちゅうこういう話をするんですが、
正直、SDGsに関心がなくても
人は生きていくことはできます(笑)。
一同
(笑)
田中
現実的なことをいえば、
それぞれの人がそれぞれなりに、
一生懸命じぶんの好きなことをしながら、
これから生きていくべきだと思います。
それが前提としてあるなかで、
SDGsということばは、
確実にあと10年くらいは
世界に影響を与えるものだと、
わたしは思っています。
きょうは高校生たちもいますが、
これからの君たちの人生を
おもしろくするものの中に、
もしSDGsと接点のあるものが見つかったら、
それはとても素晴らしいことだと思います。
日本は独裁国家じゃないかぎり、
国民に「こうしろ」なんてことはいえません。
ひとりひとりの意思があってこそ、
この国の方向性は決まっているということを、
みなさん忘れないでいただきたいと思います。
一同
(全員、何度もうなずく)
田中
‥‥と、こんなところでしょうか。
──
あの、すみません。
最後にもうひとつだけ、いいですか?
田中
なんでしょう?
──
もし一個人として、
SDGsに真剣に取り組みたい、
そういう仕事をしたいという人は、
どんな貢献の仕方があるんでしょうか。
田中
ストレートな道としては、
「ジャイカ」とか国際機関に就職して、
ODAの現場で仕事に就くというのがあります。
それから「
青年海外協力隊
」というのもあります。
青年海外協力隊では2年間、
開発途上国の現場に行っていただき、
子供たちに勉強を教えたり、
現地の農業やまちづくりの手伝いをしたり、
そういうお仕事をしていただきます。
学究肌の人であれば、
「開発経済学」という学問を
勉強するという方法もあると思います。
学者になって、じぶんの研究を通して、
貧困撲滅に貢献するというやり方ですね。
──
個人で「寄付」をしたい人は、
どういう団体があるんでしょうか。
田中
わたしが関係しているところだと、
世界の難民支援をしている
「UNHCR」という組織があります。
日本からは「
国連UNHCR協会
」の
ホームページからご寄付いただけます。
あと、きょうみたいな、
こういう話をみんなでするというのも、
広い意味での支援だと思っています。
それぞれが世界のことを知って、
じゃあどうすればいいんだろうと、
それを考えつづけることはとても大事です。
そういう人々がすこしでもふえていけば、
世の中は変わっていくと思います。
時間はかかるかもしれませんが、
その小さな積み重ねこそが、
世界を変えてくれると信じています。
‥‥ちょっと長くなりましたが、
きょうはそんなところでしょうか。
──
はい、ありがとうございました。
田中
ありがとうございました。
──
それではこれにて、
SDGsの特別授業を終わりにします。
参加してくださった正則学園のみなさんも、
きょうはありがとうございました。
全員
パチパチパチパチ!(大きな拍手)
(終わります)
2021-11-09-TUE
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