7月1日に一般販売をスタートした
「ほぼ日のアースボール ジャーニー」。
今度は「旅」がテーマということで、
これまで70カ国以上を訪れたという
『地球の歩き方』の宮田崇編集長に
旅の話をいろいろうかがってきました。
コロナ禍でガイドブックの売上は9割減。
一時はブランドの存続が危ぶまれたことも。
ようやく旅行業界に光が見えはじめたいま、
プライベートも仕事もごちゃまぜに
思いの丈をたっぷり語っていただきました。
聞き手は「ほぼ日」の稲崎です。
- ──
- 海外へ行くときに、
とりあえず『地球の歩き方』を買うという人、
けっこういると思うんです。
- 宮田
- ありがとうございます。
- ──
- 100以上タイトルがあるのも驚きなんですが、
改訂版も毎年出されているんですよね。
- 宮田
- 渡航者の多いところは毎年ですね。
細かい情報が変わるので、
やっぱりメンテナンスは必要なんですよね。
- ──
- 『地球の歩き方』を作るときに、
とくに大事にしていることってありますか。
- 宮田
- 「旅人目線かどうか」ですね。
- ──
- 旅人目線。
- 宮田
- 創刊者の初代編集長がよく言っていたことで、
「旅人を成田空港から出発させて、
もう一度無事に成田に帰すことが、
この本の使命だ」と。
- ──
- おおぉー。
- 宮田
- もし外国で盗難にあっても
この本があればなんとかできるように、
日本領事館の連絡先が載っていたり、
帰国のための一時渡航証のもらい方、
なんなら盗難届の出し方まで書いてあります。
- ──
- 海外で困ったことがあっても、
この本さえあればなんとかなると。
- 宮田
- 現地でのトラブルを解消できて、
そして成田に旅人をもう一度立たせる。
その考えはベースになってますね。
- ──
- それが編集方針になってるわけですね。
- 宮田
- 先日、ベテランライターの方が
久しぶりのオーストラリア取材を終えて
成田空港に帰ってきたんですね。
これまではそこで取材終了なんですけど、
いまは成田に到着したあとに
ストップウォッチと万歩計を出す。
- ──
- え?
- 宮田
- いまって飛行機から降りたあと、
空港を出るまですごい時間がかかるんです。
コロナの検疫手続があるので。
- ──
- なるほど、帰国するとまず検査を受ける。
- 宮田
- それがけっこう大変みたいで、
だったらストップウォッチと万歩計で
ちょっと検証してみましょうと。
結果、空港の中を1.4キロ歩いて、
外に出られるまで4時間かかったそうです。
- ──
- 4時間も?!
- 宮田
- それがいまの旅になりつつあります。
成田に無事帰ってきたあと、
そこから4時間の延長戦が待ってるという。
- ──
- 次の改訂版には
そういう情報も含まれるわけですね。
- 宮田
- そのつもりです。
ただ、最新情報は変わっていくので、
本からウェブに飛ばすようにして、
ウェブを更新しようという話はしてます。
- ──
- 個人的な話で恐縮なのですが、
じつは20代のときに
1ヶ月ほどモロッコを旅したことがあるんです。
- 宮田
- おおー。
- ──
- そのときはスマホもなくて、
本当に『地球の歩き方』だけを頼りに行きました。
当時はSNSもなかったので、
本に書いてある情報にすごく助けられました。
- 宮田
- どういう情報を本に載せるかは、
編集メンバーもけっこう悩むところなんです。
2018年に熱い議論になったのが、
宿のファックス番号を外すか外さないか問題。
- ──
- あー、いまは使わないですもんね。
- 宮田
- でも、もしスマホが盗まれたら、
宿への連絡手段が
ファックスだけという場合もあります。
もしかしたらそれで困る旅人がいるかもしれない。
- ──
- それは、どういう結論になったんですか?
- 宮田
- 結果、残すことにしました。
ただ、残すって決めたら決めたで、
今度は宿にファックスがあるないかを、
また何十時間もかけて
調べないといけないんですけどね(笑)。
- ──
- それでもやっぱり残そうと。
- 宮田
- 「世の中にファックスがある限りは残すか」と。
- ──
- いまの話もそうですけど、
やっぱり『地球の歩き方』って
「旅」のガイドブックですよね。
- 宮田
- 『地球の歩き方』は「旅」ですね。
- ──
- 「旅」と「旅行」はやっぱり違いますか。
- 宮田
- やっぱり違いますよね。
旅行はアテンドされたもので、
誰かが泊まるところも手配してくれて、
そこに乗っかるだけのもの。
一方、すべて自分で手配するのが旅。
行先も泊まる宿も自分で決めるのが旅。
- ──
- じゃあ、この本は旅のガイドブック。
- 宮田
- 旅のガイドブックですね。
- ──
- じつは新しいアースボールは
「旅」をコンセプトにしていて‥‥。
ここで出すとすごく宣伝っぽいのですが(笑)
- 宮田
- どうぞどうぞ(笑)。
- ──
- このアースボールの名前を付けるときも、
「旅行」じゃなくて「旅」というのが、
チームの中ではっきりあったんです。
それで「ジャーニー」だったら、
旅も冒険も探検という意味も入ってるから、
アースボールでやりたいこと全部つながるぞって。
- 宮田
- ジャーニー、いい名前ですよね。
- ──
- ありがとうございます。
- 宮田
- うちには本家の『地球の歩き方』以外に、
女子旅シリーズの「aruco」というのがあるんです。
これはある編集部の女子の
「私はもっとオシャレな旅がしたい。
女子が使える旅のガイドブックが欲しい」
という意見をきっかけに作ったもので。
ジェンダーレスが求められるこの時代に。
- ──
- そこはいいと思います(笑)。
- 宮田
- で、その「aruco」のコンセプトが
「プチぼうけん応援ガイド」なんです。
- ──
- プチぼうけん。
- 宮田
- ちょっとだけ冒険。
本格的なガイドブックは冒険色が強いけど、
女子はそこまではしたくないと。
だけど、旅行じゃ物足りない。
- ──
- ちょっとだけ冒険したい。
- 宮田
- たくさんじゃなくて、
ちょっとだけ冒険がしたい。
その目の付けどころは
すごくいいなあと思ったんです。
やっぱりみんな旅に惹かれるんだなって。
だから「ジャーニー」という名前、
すごくいいと思います。
- ──
- 言わせてるみたいですみません(笑)。
- 宮田
- でも「ジャーニー」と聞くと、
帰って来ないイメージもありますよね。
旅に出たっきり、戻って来ないというか。
- ──
- そっか、ずっと旅の途中というか。
- 宮田
- 別れの挨拶も「地球のどこかで」って感じ。
「またね、じゃーにー」って(笑)。
(つづきます)
2022-07-01-FRI
「ほぼ日のアースボール ジャーニー」
2022年7月1日(金)一般販売スタート!
今度のアースボールは、
そのままでも使える本格地球儀です。
世界にあるさまざまな国と地域。
そんなカラフルで多様な世界を、
もっと旅するようにたのしんでほしい。
そんな想いで「ジャーニー」という名前を付けました。
まずは「ジャーニー」を手に取り、
気ままな想像の旅に出かけてみてください。
そしてもっと冒険がしたくなったら、
スマホやタブレットをかざしてみてください。
地球をとびだして、宇宙を旅することだってできますよ。
詳しくは公式販売ページをご覧ください。
(C) HOBONICHI