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今、あのイベントが終わってから
2ヶ月が経ちました。
とうとうDVDの編集が終了して
最終的な映像ができ上がりました。
このDVDの総合演出を手がけられた
土屋さんにとってあのイベントは
どういうものであったのかについて
お話を聞かせてください。
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土屋 |
僕はでき上がるまですごい心配でした。
どっちかっていうと、
僕が直接作るっていうよりも、
いろんな方と打ち合わせしながら
指示を出したりして
でき上がってきたものを見たわけですが
嫌じゃないものに仕上がったっていうことに
今はすごくホッとしてます。
それと、
自分でもう1回、映像で追体験すると、
また新たな発見があるわけですよね。
「そうか、詫摩さん、こんなことも言ってたんだ」
っていう感じとか、
このイベントをいちばん前のど真ん中で見てて
編集部註:
当日、土屋さんは最前列の一番真ん中の席で
このイベントをご覧になってました。
休憩時間には舞台袖中継出演のため
ステージと舞台袖をいったりきたりされていたのです。
一度見たはずなんだけど、
ライブじゃなく記録映像だからこそ
伝わってるものがあるってことに気づいて
このイベントに関わって良かったなってことを、
改めて思いました。
テレビとか映像がもつ可能性に
気づかされたんです。
「あ、そうか、こういうこと役立つじゃん、
テレビって役立つ可能性あるじゃん!(笑)」
テレビにとっても、光明ですよね。
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確かに土屋さんは
「テレビという神の老後」という
コンテンツにおいても
これからのテレビについて
まるで自分の人生のように考えて
いらっしゃいましたし
今回のDVD化のお話をしてた時も
編成部長からコンテンツ事業推進部長への
異動という時期で
「これからテレビの役割って
どういうことなんだろう?」
というテーマでお話をされていたのを
覚えてます。
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土屋 |
あの頃は、CS『電波少年的放送局』が終了する
っていうことで、なんかうろたえていたことと、
それから2年間、編成部長をやったことで
番組という単位の中で
自分がテレビを使ってどんなことをやるのか?
ということの、
力の抜き方と入れ方とみたいなことが、
なかなかできないこともあって‥‥。
テレビマンとしては、
やっぱり最悪のときでしたね。
そういう時に糸井さんから
このイベントの話を聞かされたわけです。
たぶん僕にとっては、
藁にもすがるっていうか、
それがどういうことなのかってわからずに、
気づいたら
「やります」
って言ってたんですけど。
今では、
「それが良かったなーって、
オレのカンもまだまだいけるな」
と思ったりもしてます(笑)
今回のDVDをまとめたディレクターの中谷とは
実は一緒に番組を作ったことが無いんですよ。
『電波少年』を一緒に作ってきた
土屋組でもないし。
でも、編成部長をやっていた時に
彼がやってた
『ブラックワイドショー』って番組の会議で
いろいろ意見を言ってたんです。
ボロクソに最初は言ってたんですけど
そんな中、コツコツコツコツ
彼は番組を作り続けてて
最後の方は
見てたら、なんかこう、ソウルフルというかね。
テレビが、どうやったら見てもらえるか、とか、
今、何やったら視聴率取れますかね?
というようなアプローチで
企画を出したりすることが多い中で
そうじゃないテレビを作っていると思った。
そういう視聴率とかにスタート地点を持たずに、
なんかものを考えたり作ったりするやつだな
と思ったので
彼にあのDVDのディレクターをまかせたんです。
その当時は自信はなかったんですけど
今となっては良かったなって思ってます。
日本テレビにとっても良かったなと思いますね。
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今まではテレビ番組を作る
という立場にいらっしゃって
テレビ番組がDVDやビデオになるってことは
過去にもあったと思うのですが
今回はDVDだけを制作するということは
土屋さんにとっても初めての
ことだったと思うのですが。
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土屋 |
そうですね、だからやっぱり
このDVDを作るにあたっても
ついテレビマンの生業として
フックをかけたがっちゃうわけですよね。
でも、最終的に講演部分を
ノーカットで収録するという
今回のような形になった時に
このDVDを最初から最後まで一気に見るって
見方だけでなく、
「ある人は10分、
ある人はたとえば20分で1回、
じゃ続きはそのうち見よう」
っていうふうに使えると思えてきて
ノーカットで、
全然オッケーっていう気がしました。
だからこそ、変なフックを
かけなくて良かったなって思います。
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ディレクターの中谷さんのほうから、
「見やすくすることも含めて
いろいろ考えたんですが、
講演部分はやっぱり、
どこも切ることができない。
このままだとすごく長いDVDに
なってしまうけど、どうしよう?」
っていう相談があって
それからDVD2枚組に収めるには
どのような構成にするか?
という会議になっていきました。
長時間のDVDとはなりましたが
結果的に見ていかがですか?
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土屋 |
いや、いいと思いますね。
逆に言うと、ライブではなく、
映像として伝わるものっていうものも、
ちゃんとやっぱりあるから、伝わるし。
ほんとに映像で伝えることの可能性が、
もう1回見えた、っていうのも
良かったですね。
今でもね、自分の中では
今回の「智慧の実」のイベントについては
やっぱりすごいショックで
まだ整理ついてないところってあるんです。
その中のひとつに
テレビっていうことに限定せずに、
映像で伝える伝え手として、
あたらしい光が見えてる気がしてますね。
イベントを作り始めた頃は
「ほんとに大丈夫なんですか?」って、
みんなノドのあたりまで出かかってたけど(笑)、
それをあえて言わずに、
「糸井さんが言うんだからなー、
行くしかねぇな」って、
いざ行ってみたら
なんか見たことのないところに
辿り着いたみたいな感じがしますよね。
普通だったらこのイベントって
やっぱり、通らない企画ですよ(笑)。
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それは僕らほぼ日スタッフも
それこそ、作りながら走りながら
見えてきたイベントでした。
このDVDを作るに前に、
これとこれとこれは絶対ポイントとして
押さえておきたいことってあったんですか?
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土屋 |
それはなかったですね。
僕はどこに行き着くんだろうって
いうようなワクワク感はありましたけど、
ホントそれだけですね。
だから、テレビを20何年か作ってきましたけど
この「智慧の実」という企画は
その理屈では全くないところで、
やっていくっていう覚悟をしたから、
ほんとに、どこに辿り着くんだか
全然、わからなかったですね。
その意味では自分にとって
「いつも側に置いとけるな」というものが
出来たと思います。
ほんとに家の自分のデスクに置いといて
ふと、思いついたときに見たいんです。
これがDVDじゃなくて
ビデオだったら5本組になって、
けっこう鬱陶しいパッケージになるじゃないですか。
DVDだとあの箱の中に2枚組で入る。
なんかこう素晴しさとかということも含めてね。
なんだ、文明もいいな、とか(笑)。
科学の発達、やるじゃねぇか、
っていうことも含めて
自分の中で、ほんとやっぱり
10年後に見るだろうなと思うものなんですよね。
10年後に見たい映画なんてほとんどないでしょ?
でも、なんかこう、
映画を見るってことじゃなくて、
例えば、
「谷川さんのここのところ、
もう1回10分見よう」
っていうように、
そう思えるものが映像として
あるっていうことはね、
いいなぁって思いますね。
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(もう少し続きます!) |