松井 |
形而上の世界では
「普遍」から「特殊」へと変化、
形而下の世界では逆だという……。
どちらの世界も、発想が逆転してきているんです。
そういう時代なんです、二一世紀は。 |
糸井 |
うわぁ、そんな分岐点があると、
自分を変えざるをえないから、
人体としては、イヤな変化ですねぇ。 |
松井 |
うん。
だから、私も何だか、
ワケがわかんなくなってきているんですよ。 |
糸井 |
(笑)不安になる!
「松井先生、そういう人じゃなかったじゃないですか」
みたいな……。 |
松井 |
前は、単純明快だったからなぁ。 |
糸井 |
「ずるいよ」とさえ思う。 |
松井 |
単純明快な世界に生きてきたのに、
何か急に、迷路に踏み込んでしまったような。 |
糸井 |
なんか、このほうがおもしろくなってきた(笑) |
松井 |
しかし、普遍性を求めるっていうのは、
我々現生人類に特有のことかもしれない。 |
糸井 |
(笑)イヤな話だなあ……。
ただ、松井さんのように考え続けてる人には、
なんか、長生きしていてほしいですね。
「健康であってほしい」と思ってます。 |
松井 |
あぁ、最近は身のまわりでも
死んじゃう人が、けっこういますから。 |
糸井 |
このごろ、それ、感じますよ。
松井さんとぼく、同年代ですけど、
やっぱりある年齢を過ぎると、
そういう例を見たりするし、
自分も、物忘れをしたりしますし。 |
松井 |
昨日まで元気だった人が
会議でひっくり返っちゃったりとか。
そういうことがおかしくない世代ですからね。 |
糸井 |
気をつけましょう。 |
松井 |
気をつけて、
どうなるものでもないけど。
なるようにしかならない。 |
糸井 |
たまに検査して、
チェックだけ入れるみたいなことを、
する、というか。 |
松井 |
そういうようなことは、
めんどくさくて今やってないですね。
ぼくは五年前に胃ガンで
胃の三分の二を切断していますけど、
それ以来、ぜんぜんチェックに行ってないし。 |
糸井 |
そういう人って大事にするんじゃないんですか? |
松井 |
寿命なんて、天命だと思っています。
胃ガンが見つかったこと自体もそうで、
治ることも天命で。 |
糸井 |
そっか。
あ、もう、それ以上は言いません。
松井さん、その点では、ぼくより
山あり谷ありをやってきてるからね。 |
松井 |
山、谷とかじゃなくて。
ぼくは、科学、家庭、趣味、と、
それぞれ違う世界をその瞬間ごとに、
精一杯生きるようにしてるから、
科学の世界に関しては、
いつ死んでも、悔いはないんです。 |
|
|
(明日に、つづきます!) |