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“WONDER SCHOOL !”
ほぼ日刊イトイ新聞 presents 超時間講演会。



(※前回にひきつづき、
  山岸俊男さんと糸井重里の会話をおとどけです!)
山岸俊男さんプロフィール
山岸 サンタフェ研究所の会合に
来ていたのはほんとうのトップの人たちで、
例えば、経済学者の人だと、
十年以内には、その中のひとりやふたりは
ノーベル賞を取るであろうという面々。

そういう方々が、本気で、
いまの経済学のいちばんの根底のところを、
疑いはじめているんです。

いままでの経済学は、
人間は合理的に自分の利益を追求する、
という単純な前提条件がありました。

もちろん、実際には
そうじゃないということぐらいは、
経済学者以外なら、
誰だって知っているわけで。

ただ、トップの経済学者たちが、
本気で疑いはじめたというところが、
とてもおもしろかったんです。

二〇人ぐらいの小さなサイズでの
研究集会って、すごくおもしろいですよ。

八時からはじめて五時まで集会をするとすると、
終わった後には全員が顔見知りですから、
お酒を飲みながら食事をできるわけです。
さらに話しあうことができる。

話をする時には、おたがいに、
ほんとに根本的なところを話しますし、
根本的なところを批判しあうわけです。
すごく厳しいですけど、
すごくたのしい環境なんですよ。


ところが、それより大きい集まりになると、
全員と知りあいになることはできない……
ただ、自分のやった研究を
宣伝するということになってしまう。
糸井 なるほどなぁ。
なんか、オリンピックの
選手村でのやりとりのように聞こえます。
いいですね!

そういうやりとりって、
しんどいでしょうけど、いい疲労と言うか。
山岸 すごくおもしろかったし、
すごく疲れました(笑)。
糸井 講演で、山岸さん自身が驚いているような
お話を聞けたら、
それ以上にすばらしいことはないと思うんです。

いまも、サンタフェ研究所での
山岸さんの驚きが、伝わってくるんです。
内容はわからないくせに、
とても気持ちがいいので、
そこの要素があるとうれしいなぁ、と。
山岸 私自身も、どちらかといえば、
何度もお話をしたことよりは、
新しいことが話せたらいいなと思っています。
自分でも、最近いろいろと
驚いていることがありますので。
糸井 どのみち、ぼくも含めて、
会場に来ているお客さんは、
内容のすべてを理解しようなんて
思って来ていないんだと感じているんです。

一流の学者が、どこかで
気持ちよく驚いている姿に、
感染して帰ってきたいんだと思うんです。

そういう意味では、
確実に論証が必要な話ばかりを
する必要はありませんし、
ご本人が強く関心のあることを
話していただくのが、いちばん、なんです。

山岸さんの言葉を、
会社でふと思い出した人が
「……だとしたらこうじゃないか?」
と会議で発言したり、学校にいる人なら、
まちがって専門分野に入っていく人がいたら、
おもしろいなぁとも思っているんですよ。

最近は、どういう研究をされていますか?
山岸 ふつう「文化が違う」と言われているときには、
「頭の中にあるものが違うんだ」
というふうに考えられていますよね。

ただ、私たちの研究では、
「社会のありかたが違うから、
 人は文化によって、違う考え方をするんだ」

ということを、基本的な考えにしています。

同じ構造を実験室に作れば、
日本人もアメリカ人も、どちらも、
同じような考え方をするのかもしれない、と。

それで、インターネットでつないで、
日本人とアメリカ人が
同時に参加をする実験をおこなったり、
実験室の中にいろいろな文化に対応する
社会制度を作ってみたりして、
いろいろな局面で、実験結果の
何が変わってくるのかを、調べています。

するとやはり、いろいろ、
おもしろいことが起きてくるんです。

たとえば、「信頼ゲーム」という実験があります。
これはふたりでやる実験で、例えば、
千円を預けると、その相手は
そのお金を自分のものに
してしまうこともあるけれども、
相手に戻すこともあるというものです。
戻した場合にはお金が二倍になるなどの
ルールが定められています。

このゲームでは、相手にお金を預ける額が
コンピュータによって決められてしまう時には、
アメリカ人よりも
日本人の方が正直に行動するんですね。

ところが、
預ける額を自分で決められるとなると、
アメリカ人の方が、
相手にたくさん預けるんです。

しかも、たくさん預けられた方が、
預けられた側の方でも、
正直にそのお金を戻すという結果が出ました。

もともと、アメリカ人の方が、
たくさんの額のお金を渡すだろうなぁと
予想はしていたけど、リスクを取って
たくさんのお金を渡すような局面になると、
信頼に値するような行動を
取るようになるということまでは考えていなかった。
糸井 へぇー。おもしろいなぁ。
  (明日に、続きます!)





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2004-04-21-WED

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