智慧の実を食べよう2
“WONDER S CHOOL!”
学問は驚きだ。へ
智慧の実をとどけます。
『学問は驚きだ』制作中の言葉から。
ほんとうに学びたいのは、
知ったとたんに生き方を変えてしまうような、
身体の芯から、驚きが湧いてくるようなこと。

それを感じられる、講演会を開いたのだから、
持ちはこべる形にまとめて、おとどけしたい。
『智慧の実を食べよう 学問は驚きだ』が、
追加取材を加え、単行本とDVDにまとめられました。

本や映像を作っている最中に聞いた、
「こういうことが、この本にこめた気持ちなんだ……」
というような言葉を、いくつか紹介していきましょう。

興味を持った人は、
「『WONDER SCHOOL!』コンプリートセット」の販売ページ
に、ぜひ、どうぞ!

「『WONDER SCHOOL!』
 コンプリートセット」は、
完売いたしました。

DVDと書籍は書店などで
購入できます。
こちらをご覧ください

企画:ほぼ日刊イトイ新聞
   ・東京糸井重里事務所
製作著作:バップ・ぴあ

『智慧の実を食べよう 学問は驚きだ』 については
こちらをご覧ください

第8回
力の文明から美の文明へ

(※今日からは『智慧の実を食べよう』の単行本から
  川勝平太さんの発言を、引用しておとどけします。
  こういう話は、まとめて本で読んでたのしみたい?
  そう思っていただけたとしたら、さいわいです。
  本も映像も、自宅でじっくり味わう価値があるよ!)



(追加取材中の川勝平太先生)

日本の北端は亜寒帯です。南端は亜熱帯です。
北端の稚内は亜寒帯で、
南の沖縄は雪の降らない亜熱帯です。
日本列島は亜寒帯から亜熱帯まで全部ある
北から南に広がる島々からなります。
それはいわば地球の生態系の
ミニチュアだと見立てられます。

日本には六千八百五十二の島があります。
全体として自然が多様です。
その多様な自然を生かした形で、
そして、それぞれの地域が
その風土に応じた地域作りをすると、
地球生態系を保全することの模範を
日本が発信することができます。

亜寒帯的ライフスタイル、
温帯的ライフスタイル、
亜熱帯的ライフスタイルなどを、
見せることができます。
異なる風土と調和して地域を興していくかの
模範になりうるのではないでしょうか。

それは国際社会の要請でもあります。
実際、冷戦が終わって、
世界の最大の関心事は、
地球環境問題といってよいでしょう。
「生物の多様性」を大事にしようという
国際社会の申し合わせがあります。

森林が生物の多様性の宝庫です。
それゆえ、地球環境問題の課題は、
森の保全であり、森林の育成です。

それがたまたま日本には、
国土の七割が森であり、森が残っています。
それを活用していくと、日本は島国として
全体が「ガーデンアイランズ(庭園の島々)」という
イメージができ上がると思うのです。

地球の表面積の七割が海です。
残りの三割が大小さまざまな陸地によって
占められている。

大陸といっても、
地球的観点から言ったら大きな島です、
ですから、地球の姿は多島海です。
日本も多島海です。

日本列島は、南北に三千五百キロ、
北から南に島々が広がっています。
それをガーデンアイランズにすれば
よろしいとなると、それはきれいなイメージです。

ですから、
これは経済力とか軍事力とかいうふうな、
押しつけたり、破壊したり、あるいは
相手の市場を奪うというのと違って、
引きつける文明を建設するということです。

歴史的にみて、たまたま日本の文化的遺伝子が
江戸時代に発露したとき、西洋の人々がそれを見て、
美しく清潔な国だという印象をもった。

日本の生活風土の美しさは、
西洋社会に影響を与えて
「ジャポニズム」
という日本趣味を生んだほどです。
西洋人の美意識を刺激したのです。
そういう日本人の美意識というものは
非常に非合理的なものです。
非合理的で主観的なものです。

ですが、「美しい」と感ずる心は、
誰もが持っています。
その意味で「美しい」というのは普遍的でもあります。

「美しさ」を定義する必要はないでしょう。
定義すれば、美は逃げていきます。
美しいことが大事であり、
美しいたたずまいの国にすることが
大事だということを、
どこかで心得てさえいればよいのです。

「美しいとは何か」
これは言葉にする必要がないんですね、
感動を与えるものですから。
言葉を超えています。
自分たちに美意識でもって
ガーデンアイランズという国づくりをしていくことが
地球全体の多島海を
美しいガーデンアイランズにするという志に
つながっていくことになると思います。

それは日本の現在を、いわゆる
「富国強兵」という「力の文明」をめざした時代から
卒業して、あえていえば将来の「美の文明」に向けた
移行期に今あると思う次第でございます。


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『学問は驚きだ』制作中の言葉から。
 
2004-10-01 第1回 プロの定義
2004-10-04 第2回 科学者とはこういう人間で
2004-10-05 第3回 おもしろさの堂々めぐり
2004-10-06 第4回 増やせないものをたのしむ
2004-10-07 第5回 「すごい」よりも「物語」が欲しい
2004-10-08 第6回 学問と生きかた
2004-10-12 第7回 東京は、世界の博物館

2004-10-13-WED

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