おさるアイコン ほぼ日の怪談2008

怪・その17
地下への階段


当時勤めていた病院での話です。

うす暗い曇り空の日でした。
半地下の渡り廊下を歩いていたときのこと、
横の非常階段からふっと人影が。
「うわっ! びっくりした!」
思わず叫ぶと、
ぽっちゃりしたおばあさんが立っていました。

私の大声にびっくりした様子でしたが、
笑って
「ごめんね、天気が良いから
 ちょっと上ってきたの」。

それから数分間世間話をして
おばあさんと別れ、
用事を済ませて
もう一度その渡り廊下を歩いたとき、
思い出しました。
階段の下には解剖室と
標本室しかなく、病室はないってことを。

そしておばあさんの顔が
真っ暗でよく見えなかったことを。
服の模様や表情はわかるのに、
おばあさんの立っている
非常階段の周囲だけ
粗い粒子の画面のようになって、
よく見えなかった。

話している間中、
まったく不思議には思わなかったのも
変な話ですが、
日中だったからでしょうか。
気がついてからも
怖いという感じはしなかったです。
でも、おばあさん、
病院のどこに行ったんでしょう?

(X)

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2008-08-13-WED