おさるアイコン ほぼ日の怪談2008
怪・その18
ずずず


私が大学生の頃ですから
かれこれ20と数年前、
中学校時代から仲の良かった友人が
お墓近くのアパートに住んでおりまして
私はよく、その友人宅へ
泊りがけで遊びに行っていました。

遊びに行ったら、
コンビニで買い物をするのが常で
その夏の夜も、買い出しに出かけました。

買い物を済ませ、いつものとおり、
お墓の横の道を歩いておりましたら
暗闇の中、前の方から
ずずず、ずずずと何かが歩いてくる気配がします。

その音の方向を、
目をこらして、じぃーーーっと見つめました。
友人も立ち止まり、同じ方向を見つめています。

その間も、ずずず、ずずずと
こちらに進んでくる気配を感じながら
さらにじぃーーーっと目をこらし続けました。

そして、たぶん友人と私は、
同じぐらいの瞬間に、
“ずずず”の正体をキャッチしました。

上半身のない下半身だけの、
そして、小さな足で
大人のサンダルを引きずって歩く
短パンを履いた、子供‥‥?
と思われる姿でした。

ほぼ同時に、
はっきりとその姿をキャッチした友人と私は、
手をつなぎ、
友人の「後ろを振り返るなーーー!」
というかけ声とともに
(友人は、幽霊にあったら
 後ろを決して振り返ってはいけない!
 と思っていました)
一目散に、もと来た道を引き返し、
遠回りして、アパートの部屋へ
息をきらして戻りました。

友人とふたり、あまりのこわさで、
部屋の中、ただただ、しばらく、
わんわんと泣きました。

その後、友人はうちに帰るとき、遠回りでも
決して、決して、その道は、
通らなくなりました。

夏が来ると、今でもあれは、
現れているのだろうか‥‥、
と、ふと思うことがあります。

(aoki)
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2008-08-13-WED