おさるアイコン ほぼ日の怪談2008

怪・その35
侵入


それは10数年前のこと。
夏のことだったように思います。

私の家は自営業を営んでおり、
当時は店舗を兼ねた家に住んでいました。
住居部分は2階のみだったため家は狭く、
家族で仲良く布団を並べて
川の字で寝ていたのです。

その夜、右から2番目の布団で
寝たことを覚えています。
一番右はドアが近いので
怖がりの小さな弟が、
左隣には妹が寝ていました。

いつも通りに布団に入って眠ったのですが、
夜中、左足の先にしびれを感じて
目が覚めました。

最初は、寝ぞうが悪くて
しびれたのかと思いましたが、
ビリビリした感覚は
這うように足先からゆっくりと
体全体へ広がっていきます。

「何か、やばいものが体に侵入してきている」

直感的にそう思いました。
父と母を呼びたかったのですが、
金縛りになっていて動けず、
声も出せません。

そうして最後に頭までしびれが伝わったとき、
視界がまっしろになり、
突然誰かが頭の中でしゃべりはじめたのです。

よくテレビで
宇宙人がしゃべっている時のような、
甲高い声。
日本語じゃないことしか分かりませんでした。

あ〜、どうなるんだろう?
このまま乗っ取られちゃうのか?

と思った次の瞬間、
その誰かは右耳の穴から出ていきました。

ウェットティッシュを
容器から引き出したときのように、
スルスル〜っと。

最後に「ありがとう」と言い残して。


何にありがとうなのかは、今も分かりません。
しばらくは怖くて、
別の布団で寝るようになりました。
隣に家族が寝ているというのは
心強いと思ったりもしました。

(にょり)

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2008-08-27-WED