怪・その3
カリカリ、カリカリ
私は、夜、パソコンをしていて、
そのまま居眠りしてしまうことがよくあります。
その日もいつの間にか寝てしまっていて、
なにかの音で目が覚めたんです。
なにかをカリカリ、とひっかくような音です。
最初は寝ぼけていたので、
母がトイレにでも起きたのだろう、
と思ったのですが、
廊下の電気は消えたままで、
トイレを流す音もしません。
時計を見ると午前2時過ぎくらいで、
そろそろ寝ようと思って
パソコンをシャットダウンしようとすると、
またカリカリ、カリカリと音がするのです。
ちょうど、自分の真後ろにある
障子の方から聞こえます。
私はとっさに、
誰かが爪で障子を引っ掻いているんだ、
と思い、振り返りましたが
もちろん誰もいません。
ちょっと気味が悪くなったのですが、
なんだか動けなくなって、
じー、と障子を見ていました。
すると、またカリカリと断続的に音がします。
自分でも驚いたのですが、
とっさに「誰!?」と言っていました。
その時は、泥棒だったらどうしよう、
という気持ちの方が強かったのです。
ですが、返事はありません。
今のはただの気のせいだったんだ、
と自分に言い聞かせて
今度こそ寝よう、と思ってパソコンを消しました。
布団に入って目覚ましをかけようと
iPodを手に取ると、
何もしていないのにいきなり電源がついて
表示されている曲やアルバムが全くバラバラで、
ぱらぱらと切り替わり始めました。
そのiPodはつい1週間ほど前に買ったばかりで、
故障とも思えません。
うわっ、とiPodを取り落してしまいました。
おかしなランダム表示は続いています。
その時ぞっと寒気がして、
私は布団をかぶりました。
その日はそのまま寝てしまいましたが、
夢を見たのを覚えています。
布団をかぶっている私を
一晩中、そばに立って
見下ろしている痩せた男の人の夢です。
その日以来、夜ひとりのときは、
パソコンは極力しないようにしています。
(T)
2009-08-04-TUE