怪・その4
「廃線」
自分が大学1年の頃なので、
だいたい、10年くらい前です。
ひとり暮らしビギナーでしたので、
友達と夜更けまでよく遊び回る、
などもしておりました。
そのときもほとんど深夜でした。
夜も更けたから、
そろそろ自転車で一緒に帰ろうか、と
同級生のMちゃんを促しました。
するとMちゃんは、
「あっちの橋(1キロちかく上流)から帰らない?」
と言います。
Mちゃんちはこっちの橋の方が近いじゃない、
と言うと、
夜中になると、こっちの橋は
兵隊さんを乗せた、
あの世の電車が通るという噂を聞いてしまい、
怖くて通れない、と言うのです。
自分よりも純真なMちゃんのこと、
真に受けてコワイ思いをしているのかと思うと、
ちょっとかわいそうに思えたので、
「大丈夫!
昔兵隊さんを乗せた電車が走っていたのは
この橋を渡る路線じゃなくて、
廃線になったとかいう
××線だったらしいからさ!」
と、自分はMちゃんを励まそうとしたら、
Mちゃんは
黙り込んでしまいました‥‥。
後日、彼女が話したところによると、
彼女の借りていたアパートは
××線跡地に隣接しており、
数月前の夏の夜中にMちゃんは、
乗客でざわつく電車が
近くを通る音を聞いて、
目が覚めてしまったことがあったのだそうです。
彼女のアパートは
現役の線路からはかなり離れていて、
夜中に電車の通過音が聞こえることは
考えられない立地でした。
今、彼女が1年だけ住んでいたアパートの近隣は
再開発で区画整理されて、
どこが××線跡地か、
かなり分かりづらくなってしまいました。
(あの頃は「ぐれいす」)
2010-08-06-FRI