おさるアイコン ほぼ日の怪談2010
怪・その30
「体重測定」


今年の7月の連休に、
友達と近場の渓谷にドライブに行きました。

渋滞していたので、
連休だからかと思ったのですが、
車の列の先頭は救急車と消防車。
しかも、私たちが目的地にしていた、
川を臨むように建てられた
レストランの方に入っていきました。

そのレストランは、
周りに売店や東屋などがあります。
また、すぐそばのつり橋から20mほど下に
広い川の流れが見えます。

救命士の人たちが黙々と
担架や救命具を組み立てて
はるか下の川の方へと降りていきます。

いつもは野次馬嫌いの友達が、
わざわざつり橋まで行って
下を覗き込もうとするので、
しぶしぶ私もついていきました。

若い男の人が倒れていて、
そばに友達らしき人が呆然と立っていました。
救命士の人たちが慌てていないので、
「もしかしたらダメなのかも‥‥」と
思いました。

家に戻ってニュースをチェックすると、
やはりその人は亡くなっていました。
見なければよかった、と思いました。


その日の夜、我が家のベッドの
足元の方に置いてあるテレビの前で、
トントンっと誰かが降り立ったような
足音が聞こえたのを覚えています。

その後もどうしても眠れなかったのと、
日課にしていた体重測定をしていなかったのを
思い出して、部屋の明かりをつけて、
体重をはかりました。

前日からの体重増加が、3.2kg。

確かにその日はよく食べましたが、
いつもせいぜい1kgくらいしか増えません。
もう一度量りなおそうとしたら、
体重計の画面が暗くなり、
フリーズしてしまいました。


翌朝、家にある別のデジタル体重計で
はかろうとしたら、電池切れ。
仕事帰りにいつもいく
岩盤浴の体重計に乗ったところ、
その日に限って「Errer」の表示が
出てしまいました。


さすがに気持ち悪くなって、
長年お世話になっているマッサージ師の先生
(御祓いなども行っている方です)の
ところへ行き、施術されながら
この話をしたところ、

「確かに体が重くなってるね。
 家の四隅で拍手を打って、
 玄関を開けてお線香をたきなさい」

といわれたので、そのとおりにしました。

お線香がなかったので、
買ったばかりのお香をたいたのですが、
湿っているみたいに
なかなか火がつきませんでした。

それでも、全部済ませたら、
なんだか気持ちがすっきりしたので、
また体重をはかったところ、
2.8kg減少していました。

思いもよらない最期を迎えて、
残ったやりきれない思いの
重さだったのでしょうか。
身も心も軽くなって、
向こうの世界へ行けたのならいいな、
と思いました。

(よしだま)

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2010-08-25-TUE