怪・その32
「丸い光」
今から21年も前のことです。
寒さが身に染みる頃になっていたので
秋も深まる季節だったかと思います。
わたしは3才と生後数ヶ月の息子たちを
寝かしつけるために寝室にいました。
ベッドの枕元は窓でしたが、
冷えが気になるので
雨戸もカーテンも閉めていました。
いつもどおりに子守歌を歌い、
自分が先に寝入ってしまわない様に
気を付けながら、
子供たちが寝入る気配を待っていたところへ、
突然にそれは現れました。
二男の枕元のカーテンに
とても強くはっきりとした
光が見えたのです。
丸い光の大きさは
大人の頭ほどもあったでしょう。
光はほんの一瞬、
窓ガラス一枚分ほどを
横に流れる様に動くと
消えてしまいました。
闇の中にその光だけが明るく、
何かを照らすわけではなく、
現れてすぐに消えたのです。
雨戸と窓とカーテンに閉ざされたその場所に
外からの光が映るはずはなく、
しかも、もし外からの光だとしても
その窓は畑に面していました。
夜のそんな時間に作業する人はありません。
なのに、
そんな不思議な場面で
私はちっとも怖さを感じていませんでした。
おばあちゃんが赤ちゃんに会いに来たんだ。
と自然に受け止めていました。
二男が誕生して一週間ほどたった日、
退院許可が出て夫に電話すると、
祖母はその朝、亡くなったところでした。
赤ちゃんの誕生を心待ちにしていた
おばあちゃんの心残りだったのでしょう。
あの光は、おばあちゃんが
二男を見に来て、
そして安心して帰って行ったのだろうと、
今でも思えるのです。
(わと)
2010-08-27-FRI