怪・その43
「山間の温泉地」
数年前、
今の旦那とまだお付き合いをしていた頃、
某有名観光地に旅行に行きました。
山間の温泉地で、
比較的古い旅館が多いところでした。
一泊して、朝目覚めると
低血圧で寝起きのものすごく悪い彼が
先に起きていました。
珍しいこともあるもんだ! と思い、
朝食を取り
その宿を後にしました。
次の旅の行程に移動中、
おもむろに彼が
「宿を出てから話そうと思って」
と
語りだしました。
実は昨晩、
ふと夜中に目を覚ました彼は
布団を誰かが歩く感触を感じたそうです。
てっきり、私が
お手洗いにでも行くんだろう、
と思い
ふと横を見ると
爆睡する私の姿が。
あれ? と思い
恐る恐る部屋を見渡すと、
私の足元あたりに
女中の格好をした女性がぽつん、と
座っていたそうです。
寝ぼけた頭で一度は、
ああ、旅館の人かな、
と思ったそうですが、
そんなわけない!
今は夜中だ!
と気付いた瞬間、
滝のように冷や汗が全身から噴出し、
体が硬直してしまったそうです。
そのまま一睡も出来ずに
夜を明かしたそうです。
彼は話し終わった後、
ああすっきりした、といった感じで
その後も平然と暮らしていたのですが、
逆に私の方が怖くなり、
しばらく電気を消して寝ることが
できなくなってしまいました。
ちなみに彼はコンタクトレンズ使用ですが、
その夜中は何故か
裸眼でもはっきりと、
その女中さんの姿が見えたそうです。
(うりぼうのよめ)
2010-09-06-MON