怪・その24
「火事のあと」


これは、
私が中学生の時に体験した話しです。

始まりは文化祭の前夜だったのを
はっきりと覚えています。

私の家と道路を挟んだ斜め前に
「○○荘」という、
昔からの木造アパートがありました。

おじさんばかりが住んでいる、
とても古くて今にも壊れそうなアパートでした。

文化祭の前夜、
家の外がやけに騒がしかったので
窓越しに外を見ると
○○荘が燃えていました。

おじさんやおばさん達が
慌てて消火していましたが、
建物が古く、
火はあっという間に広がっていました。

逃げ遅れた人がいるようで、
助けに行こうとするおじさんがいましたが、
とても入って行ける状況ではありませんでした。

火の勢いは激しく、近隣も延焼し、
我が家も焼けるのではないかと、怖かったです。

消防隊の消火後、
やはり、おじさんが一人亡くなられていました。
火元はその方の部屋で、寝タバコが原因でした。

それからしばらく○○荘は
焼け落ちたままの状態で放置されていました。


私が見たのは
火事から1週間以上経った夜でした。

その日は父の実家にみんなで行った帰り、
車庫へ入る車から降りようと外を見たときです。

焼け落ちた瓦礫の中、
ポツンと一人で作業服を着て、
倒れた冷蔵庫に片足を載せ、
腕を組んで何か見ているおじさんがいました。

表情まで見えるくらい、はっきりと。

私は「あそこ、人がいる」とつぶやいて
ドアをあけました。

車から降りると、

そのおじさんは音もなく消えていました。

母もその時同じ人を見たそうです。

緑色に淡く光るおじさんを‥‥。


それからすぐに○○荘の跡は
お坊さんが来て御供養され、片付けられました。

母によると、そのおじさんを見た人は
何人もいたようです。
でも、お坊さんが来てからは
誰もおじさんを見てないみたいだと‥‥。

おじさんは何か
大事な物でも探していたのでしょうか?

(ゆづきママ)
この話、こわかった! ほかのひとにも読ませたい。
前の話にもどる 「ほぼ日の怪談」にもどる 次の話も読んでみる
2011-08-17-WED