怪・その15
「捨てられない石」
大学の頃の話です。
友人のお父さんは
宅配便の運転手をしているのですが、
ある日突然、
握り拳程の石を持って帰ってきたそうです。
理由を聞いても、「何となく」と答えるだけで、
お父さんもなぜ拾ってきたのか、
どこで拾ったのか、まったく覚えていないようでした。
当然、お母さんが気味悪がり、
捨てさせようとするのですが、
頑なに拒み、
その石を庭に祀るように置いたそうです。
日中、そんなことがあったとは知らない友人の兄が、
深夜アルバイトから帰宅しました。
かなり遠くからでも、
分かったそうです。
玄関に、白い腕が浮いているのが‥‥。
庭に野宿することも考えたそうですが、
雨も降り始め、そうもいきません。
意を決し、玄関に近づきます。
すると、ただ浮いている様に見えた腕は、
一定のリズムで上下し、手招きをしていました。
腕に触れないように玄関の戸を開き、
中に入りますが、半開きのドアの向こうの腕は、
変わらず上下に揺れているだけ。
少し安心し、扉を閉めようとしたその時、
白い腕に、手首をガシッ! っと掴まれたそうです。
(ST)