怪・その25
「マンションの隣の階段」
中学生の頃の話です。
当時マンション住まいで、
その日も家に帰るために階段を登っていました。
そのマンションに階段は、
並んでふたつあり、
私は自宅に近い方の階段を使っていました。
2階ほど登ったところで、
ふと隣の階段に目をやりました。
見たことのない若いショートカットの女性と
目が合いました。
それもたまたま目が合った、というよりは
思いきり目を見開き
「凝視」「ガン見」というような感じで
見られているのです。
少し気味悪く感じた私は
女性に軽く会釈をして目を逸らし
再び階段を登り始めました。
登りながら、あれ、と違和感を感じました。
女性はマンションの廊下や階段の踊り場ではなく、
階段の途中にいました。
普通は階段にいれば、登るか降りるかしているはず。
しかし彼女は、全身をこちらに向けていました。
その時は「何か変な人だな」と
さして怖いとは思いませんでした。
自宅のある階まで少しとなった時、
もう一度、
隣の階段を見ました。
また、あの女性と目が合いました。
私と同じ高さまで彼女も移動し、
やはり、体ごとこちらに向けて目を見開いていました。
さすがに怖くなった私は家に駆け込みました。
女性は追いかけてくるようなこともなく、
それっきり見ることもありませんでした。
(f)