怪・その3
「顔の片側が」
5年ほど前、わたしはとある小劇場に
芝居を観に行きました。
招待を受けて行ったその舞台は、
時代もの、それも刀や血糊をたくさん使うような、
痛いシーンもある作品でした
(ホラーではありませんでした)。
話が進み、血糊や女優さんの悲鳴に、
情けなくも貧血になってしまい、
たまらず目を閉じてしまいました。
その瞬間、
見開いた目、真っ赤な唇、振り乱した長い髪の、
肌が青緑色をした女性の顔の右半分が、
気味の悪い笑顔で、
ぐわあああっと近づいてきたのが見えました。
顔の近づく勢いがすごくて、
あまりの衝撃に目を開き、舞台が終わるまで、
どうにか恐怖を我慢しました。
後日、そのことを、
一緒に観ていた霊感があるという友達に話すと、
「私あれ観た帰り、
顔の左側が痛かったんだよね」
とのこと。
なぜあんなものが見えたのか。
友人の言葉は関係があるのか。
いろいろ謎のままですが、
今でもあの気持ち悪い笑顔は頭から離れません。
(りこ)