怪・その15
「仏壇から」
妹が５年ほど前に体験した話です。
当時、すでに離婚して
別々に住んでいた実父と交流があったのは
妹だけでした。
たまに父とごはんを食べに行ったり、
父が一人で住む古い一軒家に
遊びにいったりしていました。
しかし、ある時から訪ねるのを
ぱったりとやめてしまいました。
喧嘩でもしたのかな？ と思い聞いてみると、
「もう怖くて行けない。」と。
その日、妹は父の家の居間で雑誌を読んでいました。
父はトイレに立ち、妹は一人きり。
ふと違和感を感じて隣の仏間に目を向けました。
電気はついておらず、
薄暗い中に仏壇が置いてあります。
なんだか仏壇が気になって仕方ありません。
しばらく見つめていると、仄暗い仏壇の中から、
ずるり
と、男性の上半身がゆっくりと這い出てきます。
ゆっくりゆっくり全身を出しきると、
立ち上がってこちらへ向かって歩いてきます。
動けずじっと見つめていた妹は急に怖くなって、
父のいるトイレに猛ダッシュして逃げ、
助けを求めたそうです。
「その男の人、見たことある人だった」
こちらに向かって歩いてくる顔を見て
すぐに分かったそうです。
その人は、仏壇の上に額入りの白黒写真で飾ってある
曾祖父さんでした。
その後、一周忌を供養して
以来父一人のため、供養を一切していないと聞きました。
それから５年間、妹は父の家を訪れていません。
（みっこ）
