怪・その14

「にぎやかなお墓参り」

お盆にはいつも、
母方の実家のお墓へお参りに行きます。
お墓に着く前に車の中で、

家族は私に

「言わないで。」

と言います。


いつもはとても静かな田舎の墓地ですが、
やはりお盆ともなると、
あちらこちらから
ご先祖を迎えに来たり、送りに来たりで、
けっこうにぎやかになります。

お墓に向かって目を閉じて、
心の中でいろいろ唱えていると、
墓地の中の喧騒がよく伝わってきます。

近況をお互いに伝え合う声、
ひそひそと他人の噂を伝える声、
久々に会って、驚きとうれしさの混じった笑い声が、
まるで鳥たちがさんざめくように、
ラジオの周波数が
合ったり合わなくなったりするときみたいに
大きくなったり、小さくなったり。

それほど大きくない墓地なのに、
どこにこんなにたくさんの人がいるのかと思うほど、
それはそれはにぎやかです。

全体的にとても楽しそうで、
まるでお祭りにきたみたいな熱気があります。
不思議なのですが、一言で言うなら
それは、熱気、なのです。

お参りを終えて、さて帰ろうと立ち上がっても、
その喧騒はやみません。
あちらこちらで、ざわざわ、ざわざわ。


しかし、

目の前にはほとんど人はいないのです。


お盆のときはよくこの喧騒に出くわします。
はじめはとてもうろたえましたが、
最近は、ただ、そうか、と思います。

車に乗って走り出して少ししてから、

家族は私にもう一度、

「言わないで。」

と言います。

だから私は黙っています。

でも、その夜、私たちの家も
少しにぎやかになるということは、
みんな知っているのですが。

(たみ)

こわいね!
2013-08-15-THU