怪・その19
「橋の真ん中に」
私が専門学校生だった22年前の話です。
私より一足先に免許とマイカーを手に入れた女友達と
深夜のドライブをしました。
夜も更け、明日も学校があるし
そろそろ帰ろうという話になりました。
車には4人乗っていましたが、
一人ずつ家まで送り、
残ったのは運転手と助手席の私だけ。
最後、私の家に向かう途中に、
長さ15メートルほどの短い橋がありました。
そこは街灯もなく、
下を流れる川まで5メートルあるかないかで、
静かな暗闇の中、サラサラと
川の音が聞こえるような場所でした。
ほんの少し真ん中が盛り上がった形をした橋で、
登りはじめると向こう側が見えない、
太鼓橋のようなその橋を、車で渡ろうとしました。
橋に入ると、不思議なモヤモヤしたものが
ちょうど橋の真ん中、盛り上がりの頂点に見えたのです。
それは白い湯気のようであり、ユラユラしていました。
はじめは全身白い服を着た人かと思い、
友人は徐行しました。
しかし、近づくと湯気のようなものだとわかり、
またスピードを少しずつ上げました
通りすぎようと、そのまま真っ直ぐ、
車はそのモヤモヤに突き進みました。
その時です。
そのモヤモヤは車にかき消されることなく、
そのまま運転席と助手席の間を通りすぎたのです。
モヤモヤは微動だにしなかった、
という感じでしょうか。
友人と同時に
「今、真ん中のここ、
何かが通りすぎたよね? 今のなに??」
と確認して、後ろを振り返りました。
もちろん、橋の真ん中に
マンホールや穴などはあいていません。
湯気などあがるはずがないのです。
振り向いてみても、
橋には何もなく、湯気もあがっていませんでした。
真夏の夜の川にかかった橋なのですから、当然です。
怖くなり、猛スピードで家まで帰りました。
その友人とはいまだに、
あれは何だったんだ? という話になります。
(boss)