怪・その28
「隣りの赤い壁」
私の友人が学生時代に体験した出来事です。
当時、専門学校に通っていた私たちは
放課後になると、
ほぼ毎日、教室でしゃべっていました。
いつも集まるメンバーのうち
一人暮らしをしている子がいました。
彼女は学生寮が空いていなかったため
アパートに住んでいるのですが、
バイトを掛け持ちしており、
帰りは深夜になることもあったそうです。
ある日の放課後、
私たちは彼女から不思議というか
不気味な体験をしたと話を聞きました。
住んでいるアパートは二階。
隣りは住人がいたようですが、
反対側の隣り部屋は空いていて
物置のようになっていたと聞きました。
その隣りの住人が、
どうやら怪しいらしいのです。
バイトが終わり帰宅するのは、深夜でした。
時間も時間なので
彼女はあまり大きな音を出さないように
シャワーを使ったり、
洗濯は休日にまとめてしていたそうです。
ところが隣りからは、
休日で部屋にいても、物音が全くしないのです。
テレビの音は聞こえるのに
いくらなんでも歩く音や
扉の音がしないなんておかしい!
現に階下の部屋からは
時々掃除機をかけている音などがします。
もしかして倒れているのかなと思った彼女は
思わず隣りの部屋を覗いてみたそうです。
というのも、部屋は安いアパートのせいか
壁にコンセントを挿した穴の跡があって
その隙間をビニールテープで
塞いだようになっていたのでした。
でも穴の隙間からは
赤い壁のようなものしか見えません。
チャイムを鳴らしても返答がなく、
新聞挿しの小さな隙間を覗いても
やっぱり赤いものしか見えません。
大家さんに相談しようにも、
バイトから帰ると深夜、
休日は大家さんが不在と
なかなかタイミングが合いません。
それから何日か思い出しては
穴から様子を伺っても、
赤い壁みたいなものしか見えず。
やっと大家さんに会えた彼女は
隣りのことを話したそうです。
しかし、大家さんからの返事はこうでした。
「部屋の壁が赤いわけがない、
全部の部屋は統一して、壁はベージュだよ。
お宅のお隣りさんは、病気だったらしく
目が充血したみたいに真っ赤でね、
何ヶ月か前にいろんな病気が合併して、
亡くなったよ。
今は誰も住んでいない。」
彼女はその後、別のアパートに移りました。
(nana)