怪・その19
「ほんとうに同じ音」
実家での、母の体験です。
家は、建て直して2世帯住宅となっており、
両親は階下で暮らしていました。
両親の寝る部屋の南側は、
箪笥や机を置いてある部屋で、
私が帰ったときに滞在する部屋でもあります。
この二部屋は、壁ではなく、
ふすまで仕切られています。
ある夜、母は夜中に
物音で目を覚ましたそうです。
その南隣の部屋で、
誰かがごそごそと動いている音。
押入れを開けたり閉めたり、
箪笥の引き出しを開けて
ごそごそして閉める音が聞こえる‥‥
とっさに時計を見ると、夜中の2時頃。
泥棒だと思い、
2階の兄を起こそうと思ったそうですが、
もう遅いし(兄は毎朝5時起き)、
どうせお酒を飲んで熟睡だろうし、で、
布団の中でどうしよう、
どうしようと思っていても、
物音はやまず、
仕方なく布団から出て、
常備の懐中電灯を持ち、
そこで、同じく目を覚ました父と一緒に
南隣の部屋に続くふすまを開け、電気をつけました。
しかし、もちろんというか、
誰もおらず、音も止んだそうです。
電話をかけてきた母は
「泥棒じゃなくてホントよかった」
と申しておりました。
そして、私も本当にホッとして、
「老夫婦で対処しちゃだめだよ、
本当に泥棒だったら
命がないかもしれないから、
お兄ちゃんを絶対起こさなきゃ」
なんて返したのですが‥‥、
電話を切り、夜になってからハタと、
じゃあその音は何だったわけ? と思うと、
怖くなりました。
いや、確かに泥棒よりもマシかもですが、
怪しげな存在も怖いです。
母曰く、
誰かがほんとうに襖を開けたり閉めたり、
引き出しを開けたり閉めたりする音と
同じだったそうです。
(Hitomi Y)