怪・その34

「愛犬と別れて」

高校生の時の話です。

小学生の頃から可愛がっていた
愛犬(ララ)が死んでしまい、
私は毎日、家でも学校でも泣いていました。

ある晩、夢に愛犬が出てきました。
小型の可愛らしいマルチーズなのですが、
夢の中ではかなり大きな犬で、
男性の声で喋るのです。

私は怖くなってしまい、
泣きながら「もう帰って」と頼むと、
「お前がいて欲しいっていうんだから、
 いてやるよ」と
居座ってしまうという夢でした。

朝起きて、母にその話をしたところ、
母は
「ララちゃんは天国に行きたくて、
 わざと怖い姿であんたが思い出せなくなるよう、
 脅しに来たんやな」
と言います。

昔、母がまだ子供だった昭和初期、
母の叔母が子供を亡くし、
毎日お墓に行って泣いていたのだそうです。

ある日も、
亡くなった娘が好きだった柿を持って
お墓へ行き、
柿を下げて帰ろうとした帰り道、
突然、子供が1人、
叔母が持った柿を盛った籠に飛びつき、
柿を食べ始めたのです。

その子は、ボロボロの着物に髪を振り乱し、
口は耳まで裂け、
目がギラギラとした「鬼」でした。

しかし、紛れもなく、
叔母が亡くした子供の顔だったのだそうです。


叔母は必死に子鬼を振り払い、
お寺に駆け込みました。

その時、住職様に
「亡くなった人は、
 この世で嘆いている人がいると
 安心してあの世にいけない。
 だから、怖い思いをさせて、
 その人が思い出せないようにするんですよ。
 あなたも、もう泣くのを止めて、
 娘さんを成仏させてあげなさい」
と言われたのだそうです。

その話を聞き、
私も愛犬を思って泣くのを止めました。

しかし、うちの愛犬は
まだ成仏してくれないようなのです。

その後もずっと、
亡くなって30年経った今も、
私の夢に出てきます。

すっかり毛はボロボロで、
痩せ細った姿なのですが、
私は夢の中で、
いつも愛犬を腕にしっかり抱きしめています。

(もつ)

こわいね!
2015-08-31-MON