怪・その37

「初めての広島で」

数年前、広島へ
家族旅行へ出かけたことがあります。

関東地方に住む私たちにとって、
初めて訪れる広島の地。
グルメや宮島を楽しみ、
やはりはずせないと、
原爆ドームへ行った時のことです。

平和記念公園の一角に、
千羽鶴がたくさん飾ってある場所がありました。

幼い娘は、「わあきれ〜」と叫びながら、
はしゃいで千羽鶴に向かって走って行きます。
夫はニコニコしながら後を行き、
私もとても楽しい気持ちで
ゆっくりとついて行こうとした時。

急に涙が止まらなくなったのです。

念のために言っておくと、
その時私は、平和に思いをはせていたとか、
千羽鶴に感動したとか、
気持ちが高ぶっているとか、
まったくなかったのです。

久しぶりの家族旅行に満足し、
娘かわいいなあ、とか、
ホント楽しいなあ、としか考えていませんでした。

なので、突然流れ出した涙に、
私自身とてもびっくりしてしまいました。

千羽鶴に近づくほど、
涙はどんどん流れてきます。

体(目)と内面が、
別のものになったようでした。
仕方なく私は、千羽鶴から離れました。

ある程度の距離まで離れると、
涙は止まることがわかり、
子どもと夫が不思議そうに戻ってくるまで、
そこで待っていました。

その時に感じたのは、
千羽鶴にこめられた世界中の人々の気持ちに、
私の何かが反応したのじゃないかということ。

強い想いや、祈りというのは、
人になんらかの作用(勝手に涙を流させる)するほどの、
具体的な力があるんじゃないかということでした。

(ありんこ)

こわいね!
2015-08-31-MON