怪・その31
「探しもの」
5〜6年前のことです。
当時飼っていた犬はお腹が弱くて
トイレを催すと
外に行きたいと知らせに来ていました。
8月初めのその晩も
行きたいというので
3軒先の草の広場に連れて行きました。
午前2時頃です。
用を足したあとも
くんくん匂いを嗅いでいるので
待っていると
広場の前の道を女の人が通りました。
足音もなく突然。
え? こんな真夜中に?
足音がしていない‥‥。
怪訝に思ったことはもうひとつ。
その女の人がはいていたのが
ずっと前に流行した、
ブリーチデニムのミニスカートだったことです。
早く帰ろうよと犬を促して
ふと家の方を見ると
私の家のお隣の、2階の電気がついていました。
80代の老夫婦が住むお隣は
いつも9時には
もうすっかり電気が消えているような
早寝の家です。
電気がついていたのは
40代で病気で亡くなった
娘のYさんの部屋です。
前を通ると
人影が動いていて
何かを探していると感じました。
そういえばYさんは若い頃
ブリーチデニムのミニスカートを
好んではいていました。
それと、亡くなって
10年ほど経った年の梅雨の頃、
Yさんの部屋の荷物を処分しているのを見て
ちょっとかわいそうだなと思ったことも
思い出しました。
たぶんあの人はYさんで、
彼女は自分の大事にしていたものがみつからず
探しにきたのだろうと思います。
亡くなった人のものを処分するときは
お知らせして
納得してもらった方がよいのかもしれません。
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