怪・その33
「飛び回る白い蝶」
何年か前の夏の終わり、
友人ととある音楽フェスへ行きました。
その開催地までは
新幹線で行くような距離だったのですが、
夏の思い出にとはるばる出かけたのです。
フェスを満喫して、翌日、
レンタカーを借りて私たちは
もう一つの目的の場所へ。
そこは、友人の父の眠る墓地。
日本中、時には海外へも
仕事で飛び回っている友人は
しばらくお墓参りに来ることができず、
久々の訪問でした。
車を降りた時から、
友人のもとへ、
小さな、モンシロチョウくらいの白い蝶が
どこからともなくやってきて、
その後も墓前で
長い事いろいろと話しかけているであろう
友人の周りを、
ずっとふわふわと飛び回っています。
私は、それを
少し離れたところから眺めていて
「あぁ。パパさん、喜んでるんだなぁ」
と思っていました。
帰省した娘を玄関先まで出迎えて、
あーだこーだとちょっかいだしてくる、
話に聞いていた、
生前のパパさんそっくりだったから。
結局、車に乗り込むまで、
その蝶は友人について回っていました。
蝶には亡くなった方の魂が乗ってくると
どこかで聞いたことがあります。
パパさん、今年のお盆も帰れなくて‥‥と
友人は悲しんでいたけど、
めちゃくちゃ元気に働いてるから、
安心してね。
(こんばい)