怪・その32
「父の緑のカバン」
これは私が、小学校一年生ぐらいの話です。
特別霊感があるわけでもないのですが、
一度だけ、今でも不思議に思うことがありました。
当時は母親とお風呂に入っていて、
いつも私が先に出て
体を拭いていました。
ちょうどお風呂場から斜めに位置するあたりに、
父が使っていた仕事用の緑のカバンがありました。
いつも定位置にあるそのカバンに目を向けると、
なぜか、悪寒というか、寒気のようなものを感じました。
それから数日経った時、
いつものようにお風呂上がりに体を拭いていると、
不意にカバンが気になり
目を向けました。
すると‥‥
「え、顔‥‥?」
カバンにはうっすらと、
骸骨のような顔が浮かんでいたのです。
怖くて何も言えず、
ただ立ちすくんでいました。
しばらくすると、
あの骸骨のような顔は消えていました。
いったい何だったのか今でもわかりませんが、
あの当時は、家族に良くないことが起きないか、
毎日気が気でなかったです。
(y)