怪・その49
「事件のペンション」
今から20年ほど前、
私が短大生だった頃の話です。
8月の暑い夜、友人の運転で
男子2人、女子3人で
夜のドライブをしていました。
特に行き先などの目的もなく
走っていたのですが、
誰かが
「今から心霊スポットに行こう!」
と言い出しました。
私はあまり気が進まなかったのですが
特に目的もなかったので行くことになりました。
行き先は、何年か前に
経営している夫婦が殺害されたという
ペンションでした。
噂では、夫婦の霊が出ると
有名な場所でした。
場所はあまり覚えてないのですが
山道のようなところを通った山の中腹あたりに
ペンションはあったと思います。
ペンションに到着し車を止めたら友人が
「ここまで来たから中に入ってみよう!」
と言い出したのです。
私はあまり霊感はないのですが
たまに出くわすことがあったので
「絶対に行かない!」
と車に残ることにしました。
男の友人も怖くて行けないと言うので
2人で車に残り、
あとの3人がペンションの中に入って行きました。
ペンションは中に人が入れないように
有刺鉄線がしてあったのですが
当時は有名な心霊スポットになっていたので
人が通れるぐらいの空間が開いてました。
そこから3人が入って行き
15分ほどして車に戻って来ました。
「中に入ったけど
壁に落書きがいっぱいしてあるぐらいで
何もなかったよ〜」
と中の様子を報告してくれて、
そろそろ帰ろうかとなった時
友人の1人が
「えっ‥‥何で?」
と言いながら
ペンションの方を眺めていました。
視線の先の方を見てみると
有刺鉄線の中のペンションの敷地内に
古い埃被った白い車が止まっていました。
その車は事件後から動かしてないのか
雑草が生い茂る中にありました。
特に変わった様子もなかったので
「どうしたの?」
と聞いてみると
「何で?
何であの車ライトが点いてるの‥‥?」
もう一度その車を見てみると
車のスモールライトが
うっすらと点いていました。
私たち5人全員で見てしまった後、
全員無言のまま
友人の運転で急いで山を下りました。
その後何年かして
ペンションは取り壊されたらしいのですが
夏のゾワッとする体験でした。
(s)