怪・その50

「静かなアパートで」

以前、住んでいたアパートの話です。

少し古いですが、
私をふくめ独り暮らしが集まっていて、
比較的静かに過ごせたので、気に入っていました。


その日は日曜日で、
仕事が立て込んで疲れも溜まっており、
昼ご飯の後、昼寝をしていました。

横になってどれだけ経ったか、
右側から子供の声で、

「ねぇ、ねぇ」

と囁く声がしましたが、
眠かったので無視していました。

弟が小さい時に、そういうふうに
起こしてもらったなぁと
夢うつつで思い起こしていました。

次第に話しかける声が大きくなり、
体を揺さぶられるようになり、
それでも私は眠くて起きられずにいました。

すると、

「ねぇってば!!」

と叫び声と共に、
布団から出ていた右腕を
小さな手でバシッと叩かれました。

流石に寝ぼけながら
「何よ?」と起き上がりかけたところで、
ふと気づきました。

この部屋の合鍵はまだ誰にも渡していないし、
そもそも疲れてたから
誰かと会う予定もない。

独り暮らしなのに、今起こしてきた人は誰?

慌てて部屋の玄関も窓も確認しましたが、
きちんと施錠されていましたし、
部屋も昼寝前から変わりない状態でした。

結局その一度きりでしたが、
正体がわからないまま、
仕事の異動に合わせて引っ越しました。

今でもそのアパートはあるそうです。

(y)

こわいね!
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2018-08-17-FRI