怪・その52

「のぞきこむ父親」

私は現在看護学校の教員をしております。

その前に11年、
大学病院の小児科の看護師をしていました。

地方の大学病院なので、
個人病院で経過を観て
病状が厳しい子供たちが
大学病院に入院してきます。

個室はとくに
注意の必要な子供が入院していました。

夜勤は症状に応じて
1〜2時間ごとに、
点滴や症状の確認で各部屋へ訪室します。

いつものように、ひとつの個室に入ると、
ベッドの足元から
子どもを観るお父さんの姿がありました。

「お疲れ様です。
なかなかお休みになれませんよね」

と、いつものようにお声をかけて、
点滴の残量を確認します。

そのとき、ふっとベッドの横を見ると、
簡易ベッドで休まれている
お父さんの姿がありました。

「わたしが声をかけたのは?」

ベッドの足元を見ると、
その人はいませんでした。

背筋が凍りつく瞬間は、
本当に声もでないものです。

どうやってその部屋から出たのかも
覚えていないくらいの出来事でした。

次の時間の状態確認は、後輩に頼みこみました。
(申し訳なかったのですが、
理由も言わずお願いしてしまいました‥‥)。

私がお父さんと思い、
声をかけたのは
だれだったのだろう。

今でもしっかり、
子どもを心配そうにのぞきこむ姿を
思い出します。

ちなみにそのお子様は治療が効き、
無事に退院していかれました。

その頃から、
この世のものではないかもしれない
子供たちの姿を
病棟内で見るようになりました。

(O)

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