怪・その71
「走り出す従姉妹」
子供の頃の話です。
いとこの一家とうちの一家が
一緒にキャンプに行くことになりました。
2台の車に分乗して
キャンプ場を目指したのですが、
道に迷ってしまい
山の中の行き止まりの小さな広場で車を止め、
いったんみんな降ることに。
大人たちが地図を見ている間に、
子供たちは車の回りで遊んでいたのですが、
普段はとてもおとなしい4才の従姉妹が、
突然すごい勢いで走り出し、
細い獣道に入っていってしまいました。
慌ててみんなで
名前を呼びながら追いかけるものの、
道の悪さもあって全然追いつけません。
やがてちょっと開けた場所で
ぼうっと立っている従姉妹を見つけて
ほっとしたものの、その足元を見てゾッとしました。
そこにあったのは焚き火の跡と、煤がついた位牌。
近くには小さな祠のようなものもあったと思います。
なんとも言えず異様な雰囲気でした。
彼女のお母さんが従姉妹を抱き上げ、
みんな半泣きで車のそばに走って戻りました。
とてもキャンプどころではなく、
その日は山の麓の旅館に泊まり、
夜は部屋の電気を点けっぱなしで寝ました。
従姉妹は、そのときのことを
「誰かが自分の手を引っ張った」と言っています。
いったい誰が?
(M)