怪・その6
「慰霊のあとで」
私が航空会社に勤めていた頃。
機内サービスもひと段落して
お客さまが寝静まった深夜便で、
同僚と乗務員席で話していました。
そこへお坊さんが
飲み物を取りにいらしたので、
私は
「今夜は席が沢山空いてますので、
どうぞ横になってお休みください」
と言ったところ、
お坊さんは
「いえいえ今日は満席ですよ、
私が沢山連れて帰って来ましたから」
と‥‥。
実際の席は、1/3程しか埋まっていないのに。
その便は硫黄島の慰霊団の方々が搭乗する、
日本に帰る便でした。
私達のいるところ以外は真っ暗な機内で、
そのことばを聞いて
ぞーーっと動けなくなりました。
空港で働く機体整備士の中にも見える人がいて、
そういう慰霊団の便には
ランディングする時から
翼にも機体にも人がぶら下がっているのが
見えるそうで、
絶対に整備に来ない人がいました。
(t)