怪・その8
「穏やかな寝息」
もう10年以上も前の話です。
猛暑の日、入院しました。
高熱から来る悪寒に苦しみました。
消灯後、
穏やかな寝息が聞こえてきました。
同室患者さんだろうと思い、
そのまま眠ってしまいました。
翌日は、部屋に私ひとり。
それなのに、消灯後、
耳元でまた穏やかな寝息がします。
しかし恐れよりも体調不良が勝って、
そのまま朝まで眠りました。
翌日もまた、寝息が耳元で。
だいぶん体調も回復していたので、
「どういうことだろう?」と考えました。
全く、嫌な感じがしないのです。
私の身内‥‥?
そういえば、数年前に亡くなった
父方の祖母が、
私が生まれた時にくれたお寺のお札を
大切に持っていました。
きっとおばあちゃんだ!
心配して添い寝してくれているんだ!
そう思ったら、
急に目の前が眩しい白い光で包まれました。
しばらくして、はっとすると、
寝息は消えて、
静かで真っ暗な病室に戻っていました。
翌日から寝息は聞こえなくなりました。
そして、無事に回復し退院できました。
祖母が怖がりの私を心配して
気遣ってくれたのだと思います。
遠く離れて暮らしてたので、
数えるほどしか会えなかった、祖母。
もっとたくさん話をしたかった、
と、ことあるごとに思い出します。
おばあちゃん、ありがとう。
(O)